杉田 荘治 |
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<註> | イリノイ州教育法( 関係要旨) 「わが州ではT.L.O.判決が重要要点である。 すなわち、生徒の 服装検査の際には、〈犯罪の疑いが十分にある〉という Probable Cause は必要ではなく、生徒に〈校則違反の疑いが十分にある〉 という Reasonable suspicion レベルを満たしておれば、実施す ることができる。」 |
a.
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生徒用ロッカーの検査については、あまり大きな問題はない。 と いうのは、生徒用ロッカーとはいうものの本来、学校の器財であり 、学校の管理下にもおかれるからである。しかし、一般的には、予告 がなされ、しかも生徒の立ち会いがあることが望ましい。 しかし、 学校当局が [有害な、安全を脅かす物]が、ロッカーの中に入って いるとの[合理的な疑いが十分にある] : Reasonable suspicion を 持つにいたれば、予告なしに、また生徒の立ち会いなしに、その検 査を実施することができる。 |
b.
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もっとも慎重な意見もある。 The Court TV Cradle-to Grave 合 法ガイドによれば、[ある特定の生徒について、校則や犯罪の疑い が十分にあること、またその後、その生徒を一人に隔離して調べ てはならない。]と注意している。 もっとも、このガイドでも、[生徒の 財布や背カバンと比べても、ロッカーは学校の器財であるので、生 徒のプライバシィ侵害の程度は低い]としていることには変わりない。 |
c.
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判例 (1) S.C. v. State 事件 ( 1991 ) 先回でも述べたように、予め生徒に対して、[必要に応じて、生徒 のプライバシィは制限される]と予告してあり、T.L.O. 基準に照らし て、その検査は正当とされた。( S.C. v. State, 583 So 2d 188. Miss (1991)) (2) People v. Dukes ( 1992 ) も同様である。 そこでは既に、州規則 や教委規則で定められており、また文書で生徒や親に告知され ていた。 ( People v. Dukes, 580 NY 2d 850, NY Crime Ct. (1992 その他、既報のように [アメリカの例 2]の Zamora v. Pomeroy ( 639 F.2d. 665 ) も同様であり、このように、ロッカーの検査につ いては、あまり大きな問題はない。 |
しかし、ロッカーの検査に関して、難しい問題が派生するのは、マ リファナなど麻薬の検査のために、犬を使ってロッカーの中をクン クンと嗅がせる場合である。これについては、後述するが、ここで も一部、触れておこう。 すなわち、 |
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(3) Commonwealth v. Case 事件 ( 1995 ) 1993年、ペンシルバニア州のある高校で、[生徒たちが、麻薬を 使用したり、売買したりして、可成の銭が受け取りされ、またその ために公衆電話をよく利用している。]との情報が入ったので、校 長は正式警察官の出動を要請して、全校生徒のロッカーを犬で 嗅がせた。 その間、生徒たちはクラスで待機させられた。 その結果、ある生徒のロッカーから麻薬が発見され、その生徒 も、それが自分の物であることを認めたので逮捕されたにもかか わらず、後になって [犬を使ってのロッカーの検査は違法である] として訴っえて出た。 ペンシルバニア州控訴裁も生徒の主張を認めて、[その生徒の プライバシィは尊重されなければならず、明らかに不正売買が行 われている、という合理的に十分な疑いがないにも拘わらず、安 易に犬を使ってロッカーの検査をしたのは違法]である、として教 委側の主張を退けた。( Commonwealth v. Cass,PICS Case No.95-4649, Pa. Supp. Oct. 4, 1995 ) ○ わが国の常識から判断すると、奇妙な判決と考えるが、人権尊 重の意識が強く、またこのような検査には、慎重の上にも慎重を 期すとの趣旨であろう。 |
a.
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生徒用のパーキングもロッカーと同様に学校の財産物であるか ら、学校の管理下におかれる。従って、ここでは余り、大きな問題 はい。 犬を使った麻薬の検査についても、判例は認めている。 先回で も 少し述べた、State v. Slatter 事件では、ワシントン州で、ある 高校生が、マリファナを売買しているとの確実な情報が入ったので 、先生が、始め、その生徒のロッカーを調べたところ、230 ドルの 現金と電話番号を書いた紙が出てきた。 そこで、強い 疑いを懐 いて、学校側がパーキング・エリアに駐車してある その生徒の車 を学校保安官が調べたところ、トランクの中の施錠されたブリーフ ケースの中から、80グラ ムのマリファナが見つかった事件である。 州控訴裁判所も、[学校当局は、速やかに容疑事実を調べる合 理的な理由があった] として、これを容認した。 ( 56 Wash. App. 820, 787 P.2d 932, 1990 ) |
b.
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学校以外のパーキングの場合 Student Searches and the Law ( National School Safety Center刊 1995) によれば、学校以外のパーキングに駐車した 生徒用自動車については、学校教職員は調べることは出来ない。 正式の警察官によって、正式の手続きを踏んで為されることが 必要である。 |
a.
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先回 3[アメリカの例]でも述べたように、今すぐ起こりうる危険 性がある場合など、極めて例外的なものである。 もしそうでなけ れば、大きな論議を引き起こすに違いない。 前述: Student Searches and the Law は、「危険な麻薬や武器 を持っているという信頼すべき十分な証拠」に基づいて、殆ど連邦 憲法修正第4条が求めるところの Probable Cause レベルの疑 いがなければ、実施してはいけない、としている。 |
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b.
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判例 まず、違法とされた例を述べよう。 |
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しかし、下着を下げさせる検査を容認する事例もある。 次が、その例である。 |
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このように、やはり難しい問題である。 控訴審の判断も消極的 容認論といえよう。 |
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下着を下げさせる検査を、制定している州 前述の意見書によれば、アラバマ、ニューヨーク、ミシガンの各州が規定してい る。 また、その際、親の来校を検査の前に求めている。 |
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次のページへ 1998年6月記 無断転載禁止 |