杉田 荘治 |
a. | 生徒用ロッカーの検査 |
ロッカーは生徒自身が管理するとともに、学校の管理下にも置かれる。 1991年のS.C.v.State事件 では、学校当局は[生徒のプライバシーは制限される。]と予告していた。 |
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b. | 生徒用の車や自転車の検査 |
1990年の In State v.Slattery 事件では、パーキングに駐車した車の中で、 生徒がマリファナを売 買していて、[正当な理由の疑い]のある検査とされた。 |
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c. | 本入れ・財布・ポケットの検査 |
両手で、生徒の服をタッチする検査は、高いレベルの[正当な理由の疑い] が求められる。また一 般的には、「ポケットを空にするように」と求めて、その 結果、なにも発見されなかった場合は、そこ で検査を中止すべきである。 |
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d. | 下着を下げさせる検査 |
今すぐ、起こりうる危険性がある場合など、極めて例外的である。 しかし前項でも述べたように、 1992年のアラバマ州の例もある。 |
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e. | 尿検査 |
意見が分かれている。しかし麻薬防止の観点から、近年、より正当化 される傾向がみられる。 | |
f. | 臭いを嗅ぐ検査 |
犬を使ってクンクンと、臭いを嗅ぐ検査も極めて例外的といえよう。 しかし、生徒の身体全体を嗅ぐ 場合と、ロッカーや生徒の車を嗅ぐ場合と では、人権侵害の程度は自ずから異なる。 |
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g. | X線による検査 |
これも例外的なものであるが、校内へ武器持ちこみとも関連して、 今後の課題とされる。 |
第2項 | 学校教職員は、[正当な理由の疑い]がある場合には、ロッカー、 机、車、財布、本入れ、 手提カバンを調べることができる。 |
第3項 | 校長または、その委任を受けた職員は、校内に入ってくる者につい て、服装、持ち物検 査を実施することができる。 |
第4項 | 下着を脱がせる検査は許されない。 |
第5項 | [正当な理由のある疑い]とは、1985年の New Jersey v.T.L.O. 連邦最高裁判決の基準 による。 また学校管理職は、検査の手順を含めて現職教 育を受けなければならない。 |
[注] わが国においても、このようなガイドラインが作成され、しかも 予め、生徒や親に広く告知し ておく必要があろう。 |
コメント
有名なNEW JERSEY v. T.L.O 判決について概観した。 原告はNew Jersey州政府、被告
はT.L.O.という高校1年の女子生徒であるが秘匿名になっている。 原告が州政府になったのは、
今まで述べてきたように、この事件は州の最高裁で生徒側有利の判決となり違法とされたので、
これを不服として州政府から憲法問題として連邦の最高裁で直接審理されるように求めた。
そこで、事件移送命令(Certiorariという)が出され、直接審理されたのである。 この点も参考
にしてほしい。
1998年10月記