4 職員会議はどのような機関か

杉田 荘治


.職員会議と校長 --職員会議は教育的審議機関--

.職員会議 日米の比較

はじめに
       活き活きとした職員会議

    最近、職員会議はいわゆる上意下達の機関となり元気がないと聞く。 職員の意思を聞き、それを
   取り入れることを制度化することである。 しかしそのさい、[職員会議としての限度]も明確にしておく
   ことである。

   これは後述するがアメリカ(U,S.A.)のそれと較べても、わが国の長所となる。

    またいずれ、わが国でもメリット・ペイ、すなわち教員の勤務成績反映の給与制度が問題になろう
   が、同じようなことがいえる。
 メリット・ペイは必要であるといわれながら、実施が懸念される最大の
   理由は校長だけによる評定が主観的・恣意的になりがちであるということである。 従ってそこでも同
   僚教員の観察・評価を制度として取り入れることが、メリット・ペイを活かす上で重要なのである。

    以下、論述する。

    職員会議は学校運営上または校長の職務遂行上、重要な役割を果たしていることはいうまでもな
   いが、その在り方は教委の学校管理権・校長の校務掌理権と教師の教職専門職性との調和のもとに
   考えられるべき問題である。しかし実際には、その在り方を巡って誤解や混乱がある。  そこで今回、
   いくつかの代表的な意見をとりあげ、それに批判も加えながら私観を述べることとする。  なお、論
   旨を明確にするため問答形式にする。

問題点1 職員会議は『校長の職務遂行上の補助機関』といわれるが
      果たしてそうか

    文部省地方課等の見解は、[校長の意思決定を、より適切なものにするため、校長が職員の意思を
   聞く場として職員会議が利用されることが多い]とし、課内会議や関係課長会議を類似なものとして
   例示するとともに[設置するか、開催するか、どのように運用するかは、校長の判断による]としてい
   る
。また[職員会議で決まったことだからという態度をとるのは、校長の責任を果たしていないことに
   なる。判断材料の一つとすればよい。]と述べている。
    なるほど、実定法上の解釈としては、そうであろうし、また職員会議を最高議決機関とする説を否定
   する意味もあってのことであろうが、いかにも消極的な解釈である。

    学説によっては、少数説ではあるが、[全国的に普遍化している職員会議についての立法的措置の
   必要と可能性はないか]とするものもあるし、また都道府県によっては、地方教育行政法33条の規定
   にもとづいて学校管理規則を定め、職員会議を位置づけているもある。
しかし、埼玉のように[学校に
   は、校務の民主的且つ能率的な運営を図るために職員会議を置く]としているのは例外的であって、
   その多くは校長の諮問機関ないしは補助機関としているものが一般的である。

問題点2 職員会議を『教育的決定機関』とする説があるが果たしてそうか

    都立大学兼子 仁教授は『新版 教育法』で[学校運営のなかで教育の内容面をなす内的事項を全
   校的に決定していくためには、『教育をつかさどる』教師の教育権(学校教育法28条6 項)を束ね、『不
   当な支配に服することなく国民全体に直接に責任を負って行われるべき』(教育基本法10条1 項)から、
   学校教師集団の教育上の正式組織として教育条理上に根拠をもつ職員会議に、その審理・決定権を
   認めなければならない]とし、また[教育課程編成、指導要録作成、教育校務分掌、生徒懲戒処分など
   全校的教育活動については、校長を含む職員会議こそが審議・決定機関である]と述べ、
校長は[職
   員会議の教育自治的決定については、対外的にそれを体して学校全体としての教育責任を果たして
   いくことが教育条理上求められる
(校長の対外的表示権限と代表責任)]としている。学説の多くもこれ
   と同趣旨であるが果たしてそうであろうか。

    ところで、この兼子説は校長の校務掌理権を次のようにとらえるところから来ていると考えられる。
   すなわち、同教授は[校務とは各学校が学校全体としてなすべき仕事(全校的学校業務。各教師の教
   育活動を含まない)と解するのが正しい]とし、前述の教育活動は教育の内的事項なので、審議、決定
   権は職員会議に属し、校長は、それへの指導的参加と対外的代表・表示を行うことが[校務をつかさど
   る]ことであるとしている。
    これに対して、鈴木 勲『逐条学校教育法』は校務をつかさどるとは、学校の仕事全体を掌握し、処
   理することであるとし、その校務は教頭、教諭、事務職員、その他すべての所属職員が処理すべき仕
   事のすべてを指す、としている。
    筆者は、校務については鈴木説が妥当であると考えるが、しかし同時に、そのような包括的な権限
   を校長に認めながらも、職員会議の権限についても『私観』に述べるような限度でこれを認めること

   妥当であると考える。 

3 私観 職員会議は教育的事項については、第一次的審議決定機関
     であり、教育の管理的事項については校長の諮問機関である


    すなわち、教育課程編成、生徒指導問題、その他教育的事項といわれる事項については、校長を
   含めた職員会議に第一次的審議・決定権があるが、最終的には校長に決定権がある。
その校長に
   ついていえば、前者の校長は職員会議の構成員としての校長であり、後者の校長は『学校』としての
   校長である。  また第一次的とは、事前に委員会等で原案作成その他、審議事項について調整
   がなされることは望ましいが、全校的な審議という点では、まさしく第一次的という意味である。

    また教育施設の設置管理、教職員人事、教育財政等の教育の管理的事項については、校長の職
   務遂行上の補助機関と考えられるので、例えば朝の職員打ち合わせ会等で足りる場合もあろう。な
   お実態として、教育的事項か管理的事項か判断し難いものもあろうが、教委、学校等によってその
   ガイドラインが策定されることが望ましい。


    なお前述の[審議決定]について少し説明しておこう。 職員会議で審議した後、[あとは校長に一任]
   とされることが多かろう。 しかし時には[参考までに挙手で採決しましょう]とされることもあろう。 これ
   も校長には参考になる。 しかし職員会議は学校の最高意思決定機関とか[教育的決定機関]説を誤解
   して、事実上、校長がそれに拘束されるとの懸念がある。 そのときにはまさしく校長の力量が問われ
   ることになるが、広く[参考までに]とか[第一次的である]ということを普及されておれば、その弊害は防
   がれ、一方、全職員にオーナー意識を持たせるなどの利点は多かろう。


    さらにこのことについて19.職員会議 その3 [日米の比較] をみてほしい。

        

学校の実態によって多少、異なるが、次のようなものが職員会議の議題になる。
○ 学年別・コース別などの教育課程の案  ○ 生徒の懲戒について  ○ 生徒の進級・卒業について
 
○ 生徒手帳その他諸規定にかんする件  ○ 生徒の下校指導・緊急避難などの件  ○ 給食について
 
○ 運動会・遠足・卒業式など学校行事   ○ 生徒・職員の健康診断について   
○ クラス担任、校務分掌などの校内人事の案  ○ 図書費の配分案  ○ 学校備品費の配分案 
○ 入学選抜について試験会場などの細案    ○ 部活動にかんする件  ○ 教育実習にかんする件  
○ PTA・地区諸活動にかんする件   ○ 生徒の表彰  ○ 生徒の休憩時間の短縮案  ○その他

      また 第16編 職員会議と校長も参照してくた゜さい。

      ガイドライン(例)    職員会議の審議事項

 1. 校長は、次に掲げる事項については、職員会議の審議を経て決定しなければならない。
   但し、職員会議の決定は第一次的決定であって、校長の最終決定を妨げるものではない


@  教育課程に関する件
  例えば特進クラスの編成、そのカリキュラム
A  生徒指導・懲戒に関する件
  例えばその行為を、停学にすべきか。 またその期間
B  生徒の入学・転学・退学休学に関する件
  例えば入学試験会場(案) 役割分担

C  生徒の保健・衛生に関する件
  例えば生徒・職員の健康診断の細案
D  学校行事に関する件
  例えば体育大会や遠足の役割分担
  下校指導(案)
E  部活動・PTA活動・同窓会などの件
  例えは部顧問(案)  PTA担当、役割

その他 休憩時間の変更、 備品の細案、 生徒の表彰, 教育実習の担当、 学年別の教科担当、
     クラス担任も一次的審事項としたほうが妥当であろう。


    職員会議をこのような教育的機関ととらえると

    以上すべての判例では職員会議の重要性を認めながら、かつその最終決定権者は校長であ
    るとしている。

原作:1991年, 平成8年(1996年)4月1日記

        無断転載禁止   旧公立・私立高等学校長