杉田 荘治 | 1.職員会議はどのような機関か 2.職員会議 日米の比較 |
@ | [校務]とは、学校教育法 28条 3項 [校長は校務を処理し、所属職員を監督 する] とされるところの校務であり、それは、学校の果たすべき仕事の全体 である。 |
A | 教育の内的的事項とは、別項で詳述するが、教育課程、生徒指導などに関 するものである。 |
B | 第一次的意思決定機関であるが、最終[第二次]決定権限は校長にある。 また、職員会議の審議以前に、各部、各教科、学年等で審議されることが 一般的であるが、全校的審議・意思決定ということでは、第一次である。 |
C | 校長も構成員である。しかし、採決に加わったりして職員会議の意思決定に 参加しないことが適当であろうし、また実態にも合っていよう。 |
D | 校長が主宰し、教頭が司会する。 |
E | その意思決定は、校長によって尊重されるべきものである。その程度は[第一 次意思決定]程度である。このことについては後述する。 |
F | 設置について任意とされることはない。教育条理上、教育慣習上、必須の機 関である。 |
G | その他 ・ 実態としては、職員会議で諸々の連絡調整や伝達などがなされることもあ ろう。しかし、これらは [朝の打合わせ会]で済ませることもできる事項 なので、本来的な職員会議とは区別しておいたほうがよい。 ・ また日々の学習指導や学級経営は、教育的事項であるが、学校教育法 28条 6項[教諭は教育をつかさどる」とする法意からして、例外的な 場合にのみ職員会議の審議事項になりえよう。 ・ 構成員・・・校長、教頭、教諭、養護教諭、助教諭、事務長など一部の事務 職員、実習助手、寮母その他、実状に応じて構成する。 |
○ | 教育的事項 |
これらは必ず職員会議で審議し、採決の有無は別として意思決定しなければならない。 |
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○ | 教育の管理的事項 |
これらは、職員会議における審議には、なじまない。例外的には、次の混合的事項として 審議されるものもあろう。 |
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○ | 混合的事項 |
本来は管理的事項のものであるが、教育的内容を含むものである。その限度において 職員会議の審議の対象になりうるものであるが、次のガイドラインを参照してください。 |
@ 教育課程に関する件 | A 生徒指導・懲戒に関す る件 |
B 生徒の入学・転学・退学 休学に関する件 (入学については入学者 選抜委員会に委任する) |
C 生徒の保健・衛生に関 する件 |
D 学校行事に関する件 | E その他 |
@ 教員人事、勤務評定に 関する件 |
A 学校予算 |
B 学校事務 | C その他 |
@ 校務分掌に関する件 | A 教科書の選定に関する件 |
B 学校予算の配分案に 関する件 |
C 学校の備品に関する件 |
D PTA ・ 校外活動に関 する件 |
E 教職員研修に関する件 |
F 校内規則に関する件 | G その他 |
@ | 実定法上からも適法であり、教育条理上からも無理がない。 大学の教授会は法定されているが、そのような規定のない職員会議 をこれと全く同一視することは教育条理上からも無理がある。 |
A | 実態にも合致している。 すなわち、校長は職員会議の意思決定の採 決に加わらないのが普通であるが、それはまさしく職員会議が意思 決定した後は、『学校』としての校長に、最終意思決定を一任している ものと考えられる。 |
B | 同趣旨の法令等も存在する。例えば、 a. 地方教育行政法 38条は、「都道府県教委は、市町村教委の内申を まって、県費負担教職員の任免その他の進退を行うものとする 」と定 めているが、その趣旨は地教委の内申が要件であり、またそれが尊 重されることが条理である。しかし最終的には、都道府県教委は、そ れに拘束されずに任免権・懲戒権を行使する。 b. 勤務評定のさい、第一次評定権者と第二次〔最終〕評定権者との関 係もそうである。 第一 次評定が尊重されることが条理であり、実態としても微調整程 度のものが多いと考えられるが、第二次〔最終〕評定権者は、これに 拘束されないで勤務評定を行う。 c. 高校入試の選抜と合格者決定との関係もそうである。すなわち某県で は、[入学者の選抜は、各高校の入試選抜委員会が行い、合格者の 決定は校長が行う ]と規定し、さらにその入試選抜委員会のメンバー については、[校長、教頭を含め学校の実状を勘案して、10名以上の 教職員で構成する ]と定めている。この場合、選抜委員会の校長 と合格者決定権者としての校長とは異なる。 |
C | 最高裁学力テスト判決(昭和 51.5.21 大法廷) も同趣旨である。すな わち、「一定の範囲における教授の自由が保障されるべき」としなが らも、「普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、 とうてい許されない」と、その内在的制約を認めている。〔判例時報 818号〕 |
D | その他の判例もそうである。例えば、 a. 退学処分をするかどうかについて、職員会議に諮問することが条理 上、当然である、とされたもの。[東京高裁、昭和 52. 3. 8, 判例時報 856号] b. 私立高校生の原級留置の決定が、職員会議の半数の教師しか出席 しなかったことに対して、教育条理上から手続き的違法とされたもの。 [新潟地裁 、昭和 42. 4. 2, 教育判例 100選・ 2版] c. 職員会議の無記名投票の結果、賛成 3, 反対 38 にもかかわらず、 校長が強行した[日の丸掲揚事件]で、法的評価はともかく、異例の 措置とされたもの。[大阪地裁、昭和 47. 4. 28. 判例タイムズ 283号] |
註 一部[4. 職員会議はどのような機関か]と重複
[無断転載禁止] 元公立・私立高等学校長 教育評論家