杉田荘治
はじめに
イングランドでは、公立学校の生徒の懲戒処分としての退学が、少し増えてきている。
このことについて最近、BBC NEWSが報じているが、その原典であるイギリス教育技術省
の資料から要点を抜粋し、次いでそのBBC NEWSの論説について付記する。
最後にコメントするが、この論述は前編「167 イギリスで、ずる休み生徒の親に罰金」の続
きともいえるので、併せてそれを参照してください。
T イギリス教育技術省統計センターの資料 表1 Department foe education and skills
national
STATISTICS First Release
学校種別 | 年度 | 学校数 | 退学処分をうけた生徒 の学校種別の% |
全生徒のうちの % |
備考 |
小学校 | 2002 | 1,300 | 14 | 0.03 | |
2003 | 1,270 | 13 | 0.03 | ||
中等学校 | 2002 | 7,690 | 83 | 0.23 | |
2003 | 8,320 | 84 | 0.25 | ||
特殊学校 | 2002 | 300 | 3 | 0.32 | 私立を 含む |
2003 | 300 | 3 | 0.33 | 同上 | |
全体 | 2002 | 9,290 | 100 | 0.12 | |
2003 | 9,880 | 100 | 0.13 |
註 懲戒処分としての退学になるものは、中等学校の生徒が圧倒的に多い(83%-84%)が、
それでも小学生も14-15%占めている。 わが国では公立小学生のみならず中学生にも、
そのような処分がないことが異なる。
なお、この資料ではPermanent exclusionsとなっているが、内容的にはその理由からも
わかるように懲戒処分としての退学であり、経済的、病気その他によるものは含まれて
いない。理由についてはBBC NEWSの項で述べる。 また特殊学校は原典でSpecial
schoolsとなっているので、そのように訳した。 その他、学校種別も、この表1では、
小学校(Primary schools)、中等学校(Secondary schools)、特殊学校(Special
schools)
にのみ分類されている。
参考 停学処分 Fixed-term exclusions
○ イングランドでは2003年度には、34,4510名の生徒が停学になった。
○ その平均日数は3.8日 1週間前後のものが最も多い。
○ 男子は女子の約4倍 年齢的には13才〜14才が最も多い(男女とも)。
U BBC NEWS (6/23/2005)号から
イングランドでは退学処分を受ける生徒は少し増えてきている。
すなわち、2002年度では9,290名であったが、昨年の2003年度では、その数は9,880名に
なり、前年比で6%の増加である。 また全生徒に占める割合も、ここ3年間で最高になり、
0.13%となっている。
退学処分の理由など
・ 混乱を引き起こしたため............... 3,040名
・ 他の生徒への暴力行為............... 1,720名
・ 大人へのへの暴力行為.................1,190名
・ 罵倒や脅迫行為のため................ .1,130名
【註】 その後、訴え出て復学を許された者は21%ある。
コメント
ご覧のとおりイングランドだけの退学処分の状況であるが、生徒一万人について13人であるか
ら、意外に少ないのではないか。しかしJacque Smith教育相は「混乱を引き起こすような生徒
に対してはゼロ・トレランスで対処する」と言っているし、教員組合もこの政府の方針を支持し
「少数の生徒によって学校を悪化させるわけにはいかない」と委員長が語っている。従って今
後も厳しい措置が続けられよう。
ところで、わが国では、このようなデータ-はない。 本文で述べたように公立学校では小学生、
中学生については退学処分はない(学校教育法規則第13条3項、4項)。 停学についても同
様であるが、但し市町村教委が「出席停止」を命ずることができる(学校教育法第26条)。
また高校生については「退学処分」は可能であるが(同法規則第13条)、実際には“退学勧告”
による“自主(的)退学”が殆どであり、公簿上や統計上には殆ど退学処分として表れない。
このような彼我の違いにも注目してよかろう。
2005. 7. 17記