日本の教育に於ける今後の課題

                                                亘 明彦

私が愛知県立熱田高等学校を最後に愛知県立高等学校の教員を定年退職するまで教育現場で体験した事に加えて、私立の愛知淑徳高等学校での教員生活を通じて体験したことなどから、現在の日本の教育で解決するべき課題について述べてみたいと思います。

1 留学生の保護者の驚きの感想

 県立高校退職後に私立の愛知淑徳高校で英語の教師として高校生に英語を指導する傍ら、留学生担当として送り出し、また受け入れる留学生の任務に就いております。本校からは毎年長期、短期を含めて約40数名が海外での生活を体験しています。受け入れる留学生は短期、長期を含めてアメリカ、カナダ、オーストラリア、フィンランド、そしてマレーシアなどの国からです。留学生の保護者は生徒が帰国する少し前に本校を訪問し、自分の娘の教育環境を見学した後、ともに帰国する場合があります。その場合、常に共通している感想は、「なぜこんなに多くの生徒がひとクラスにいるのか?」という反応です。私自身も約20年以上前にも当時の東ドイツ、アメリカでの学校視察の機会で得た体験でも、ひとクラスの生徒数は20人以下がほとんどの状況でしたから、本校を訪問した保護者がクラスの生徒数の多さに驚くのはやむを得ないことと思われます。私自身も最近の海外での状況を留学生から得るために、直接質問をしても、ひとクラスの生徒数に関してはほぼ20人以下という返答を得ることがほとんどです。

2 統計資料からの状況

 平成19年版の文部省発行の教育財政関連資料によっても明らかなように、日本のひとクラスの生徒数は韓国次いで多い数字を示しています。同様に、教育予算の国際比較を見れば、同じ資料でも示しているように、先進国中では最も低い額しか示していないようです。また、別の資料によれば、日本の教員の1週間の授業時間数は国際比較をすると約3割少ないという報告もあるようです。これは、ひとクラスの生徒は仮に倍であれば、当然授業時間数は半分になることにつながります。先日、OECDが発表した学習成績の国際比較では、日本の生徒の学習成績が最近では下落傾向を示していることがマスコミによく取り上げられています。OECDの資料分析の結果からは、必ずしもひとクラスの生徒数と学力の関連性はないという見方も紹介をされていましたが、これには現場での経験を重ねた者の一人として、疑問を感じているところです。

3 毎日の授業を通しての問題解決

 学習指導の効率化を高めるために、習熟度別学習や少人数学習が取り入れられています。特にこの制度はいわゆる指導困難校で顕著なシステムになっています。高校進学率が90パーセントを超えている昨今、中学での学力不足をそのまま高校での授業で補うのが難しいため、ひとクラスを40人以下に抑え、より少人数で学習指導の効果を高めるものです。人数が少なければ少ないほど、教師の目は一人一人の生徒に細かく行き届き、教師にとっても負担は格別に軽減されます。現状の40人クラスから20人程度のクラスにすれば、OECDでの結果も必ず向上すると私は確信をしています。生徒が減少している時になぜ教員増加を図るのかという論調がマスコミに取り上げられていますが、生徒が減少している時がまさにその絶好のチャンスであることは間違いがないと思われます。教師は専門性の高い職業として、その特殊性を重んじて、公務員削減と同じに論じる危険性を考慮すべきです。

 平成19年(2007年)12月 寄稿される。 亘 明彦さんは中央大學卒業後、愛知県立高校で
          英語科教諭、進路主任、教頭として勤務され、現在、愛知淑徳高校で指導されている。