杉田 荘治
はじめに
2003年の今、いじめ、不登校児のために都道府県教委や市町村教委が『適応指導室』をつくり、
スクール・カウンセラーを配置されたりしているため、不登校児が依然として13万人台にあるもの
の、昨年より少し減少したとのことて゛ある。 喜ばしい。 これを更に一歩進めて、彼らにために市、
区、郡単位のチャーター・スクールを創られることを提言したい。
提言 不登校児童・生徒のためのチャーター・スクールを創られること
1. 設置
○ 市、区、郡ごとにチャーター・スクールを創る。 それぞれの教委が主導して,関係グループと
協議して公立学校として設立する。
○ 小学部、中学部、必要に応じて高等部を設ける。 また出来るだけ多く分校を設ける。
○ その児童・生徒の在籍校から、そのチャーター・スクールに一時的に教育を委託する。
児童・生徒の通うチャーター・スクールは本人、保護者、両校の協議により、スクール本校ま
たは分校とする。
従ってチャーター・スクールへの転校ではなく、将来卒業するさいは在籍校の卒業である(履
歴事項)。 しかし本人などが希望する場合は協議により転校手続きをとり、そのチャーター・
スクールの在籍、卒業とする。
○ 教育は必要に応じて在籍校と協議しながら、チャーター・スクールの責任において行なわれる。
2. 標準学力テスト(共通学力テスト)
○ 市教委等はその管内のすべての児童・生徒に対して年に一回以上、標準学力テストを実施す
る。その科目は主要科目とする。
○ チャーター・スクールで学ぶ児童・生徒も特別の場合を除いて受験しなければならない。
○ その結果は一般には公表しない。 しかしその児童・生徒の学力の推移やチャーター・スクー
ルの変化は関係者に通知、報告される。
上記の標準学力テストを実施することが困難な場合は、チャーター・スクール本校または分校を含
む数校での共通学力テストを実施すること。
○ その科目、時期などは関係校の協議による。 在籍校の実力テストを利用することも考えられる
が、いずれにせよ、その本人に在籍校の他の生徒と較べて不利にならないことを要件とする。
○ その本人の学習などの評価は、そのテストの評点のみならず、そのスクールでの本人、保護者
の満足度、両校の関係者の評価などの総合とする。
3. スタッフ
○ 前述のように市教委などが設立するスクールであるから、スタッフは公立学校教員または事務
職員である。
○ 不登校児教育に意欲、カウンセリングなどに長じたスタッフを転任、新採用などによって充実
する。 従って通常の学校への転任、昇任などは可能である。
○ その他、スクール校長の権限により、必要に応じて常勤または非常勤のスタッフを採用するこ
とができる。
参考と理由
アメリカではチャーター・スクールの生徒なども含めてすべて児童・生徒は州標準テストなどを受け
なければならない。また、その結果は欠席の理由、%を含め、州のすべての各学校、各教委の得点
なとが一般に公表される。
また、州法が制定され、チャーター・スクールの認可母体は、大學、州や各教委など多様で、その
申請団体も親、教員、コミュニイティの有志、民間会社、公立学校からの転換、時には私立学校から
など、と多様である。
不登校児のみならず、音楽、芸術、技術、英才教育、語学、理数・大學入試重点、“問題児”などの
申請が認可要件を充たしておれば認可される。 大幅な自由裁量が認めるかわりに結果責任を問
う“学校選択”の思想と方針で進められている。全米で約2,700校、70万人の生徒数といわれる。
しかし、わが国のチャーター・スクールについては、当面、上述の提言が現実的であり、しかも効果
的であろうと考える。それらの子供たちに“学びの場とともに憩いの場”をつくってやること、クラス担
任の負担を軽くするとともにクラス経営や授業に専念できるようにすること、個々の学校よりはスクー
ルを創り分校を含めて広範囲に対応することが、より教育的て゜あろうと考える。教員の資質を問う
さいに、そのような教育改善策も必要であろう。
なお杉田のホームページ『41- 5 学力標準テストとチャーター・スクール』、『41アメリカのチャーター・
スクール』、また『63. 提言‐ 都道府県による学力標準テストを創設されること』その他を参照してくだ
さい。
おわりに
わが国のチァーター・スクール推進グループも地方自治体も標準学力テストやそれに代わる共通
学力テストのことを避けているように思われるが、不登校生徒のチァーター・スクールといえども「学
びの場」であり、公費による教育という“公の性質”をもつことは否定できない。従って提言のような
点を各領域で検討されることを期待したい。
2003年8月11日記