杉田 荘治
はじめに
アメリカでは『国民的肥満』の問題とともに子供たちにとって不健康な食べ物が大きな問題になりつ
つある。そこで連邦的事項としてのスクールランチについて、その根拠法の『スクールランチ』法を見
直そうとする動きが少しづつ出てきている。当面すぐの改正ではなく5年間かけて検討とのことのよう
であるが、それについてChristian Science Moniter (4/15/2003)号その他を資料として見てみよう。
T 見直しの背景
前編でも述べたように『国民的肥満』、『子供の体重過重』が背景にある。ソーダ‐水、スナック菓子
などの自動販売機、ファーストフードのチェインとの契約、個々の教委や学校での禁止や制限、また
“草の根運動”としての親たちの団結なども『法』そのものを検討させる力になっている。 また連邦の
スクールランチ政策そのものが混乱していることも挙げられよう。
U 『スクールランチ法』とは National School Lunch Act and Program
1946年にトルーマン大統領が署名した法律であるが、全米の公立学校や非利益私立学校、子供ケア
センターなどの食事について連邦政府が補助金を出して滋養があり、しかもバランスがとれた食物を無
料か廉価で子供たちに提供することができるように計画されたものであった。
今でも年間、100億ドルの補助を2700万人の生徒たちにしており、そのガイドラインも作られているが
、それによっても全体の30%のカロリーが太る原因をつくっているといわれる。
制定された1946年当時は第2次世界大戦によって子供たちの体重は低下し栄養不良の子供も多かった
ので、これを改善しようとするものであった。すなわち子供の骨に肉を与えようとするような政策であって
食事療法などを考える余裕はなかった。とにかく腹一杯、食べさせることであったが次第にその流れのま
まに推移し、遂に全米の子供たちの多くに『体重過重』の原因をつくり出すようになったのである。
その他に好ましくない食物のマーケットを創りあげてきたことも事実であろう。例えば、レストランが余り
使わないポークの塊をスクールランチに廻してきたようなことである。
V 改善の兆しと問題点
政府や学校の動きは既に正しい方向に動き始めている。太る内容をもつスクールランチは着実に、ここ
数年、減ってきているし今後も減るであろう。実はBush政権は余り熱心ではないが、しかし学校や教委
によっては専門家を呼んで、捻り巻きににして焼いた塩味のプレッチェルや林檎でつくられる連邦のガイド
ラインどおりのスクールランチさえも、果たしてこれでよいかと尋ねたりしている。
またある学校は親と教育関係者が協力して、すべてのソーダ‐水やチップス、菓子の販売を校内で禁止
し、その代わりに健康な寿司やターキードッグ、唐辛子のチリをキァフテリアで出すことにしているが、子
供たちの抵抗も少ないようである。しかし問題点はある。
1 兵站すなわち価格などの問題。 例えば寿司を地方のレストランとから仕入れる価格が問題であるが
これも案外、案ずることはなくその取引は改善できる。このように別に学校にそのような料理施設がなく
ても新鮮で有機肥料を使った食べ物、しかも時にはグルメとして喜ばれるものも外部から仕入れることが
できる。価格もやり方次第でできるし、また他の学校のキァフテリアから受け入れる場合でも少し加算するだ
けでできる方法もあるだろう。
2 子供たちにコーチすることも必要であろう。 すなわち、今まで食べてきたものと違うので、円い小型の
硬いパンであるスコン、天火で焼いたタンドリアなどを受け入れるようにガイドすることである。
3 しかも従来の物を一掃することはしない。彼らが考えて「自分は健康のことを考えてビザが載せてある
カボチァのズッチニを選んだ」と生徒が笑っていえるようにすること。またある女子生徒は自分の食事
療法で細身になりたいとして新しいメニューを選ぶなどである。
4 しかしまだ残された課題は多い。すなわち、従来からのメニューにこだわる生徒も多いことである。
現に今でも彼らにとっての上位五つは、 @ビザ Aチョコレートチップ・クッキー Bコーン
Cフレンチフライ Dチッケンの塊
コメント
ご覧のとおりであるが、連邦の『スクールランチ法』そのものを改正しようとする国家的戦略である。
5年後の改正のための見直しであるがその影響は大であろう。注目したい。また一律禁止ではなく、
メニューの幅を広げ生徒自身に考えさせることなども参考になろう。好ましいメニューに寿司が含まれ
ていることも喜ばしい。
2003. 4. 19記