79. 最近のアメリカの教育の話題(続き2)

  アラビア語・イスラム教の授業増加  スナック菓子禁止等の学校規則はつくられるか?


杉田 荘治


話題T アラビア語やイスラム文化の授業が盛んになってきている

    アメリカでは最近(2003年3月)、多くの生徒たちや市民がアラビア語コースを選択するようになって
    きている。またイスラム文化についての理解も深めようとしている。
    例えば、エジプト生まれでイスラム教徒であるMuhammad Eissa博士は、毎週5日間、イリノイ技術研
    究所でアラビア語を教えているが、最近アメリカ全土で優秀なアラビア人教育者の需要が高まるにつ
    れて、彼の講義がビデオに採られてユタ州の単科大学や総合大学での授業に使われている。
    また彼の自由時間にも割り込んできて、地方の教会やロータリークラブで急にイスラム文化について
    講義することも増えてきている。 【資料】Miami Herald (3/18/2003)号

    同様に、国立中近東言語センター部長のKirk Belmapさんも「多くの大学で登録する学生が2倍にも
    3倍にも増えて、その関心は爆発的である」と言っているし、他の博士も「昨年の秋には二つのアラビ
    ア語クラスを創ったが、今やそれらの学生に背を向けても他の多くの需要に応えなければならない」、
    「大学だけではなく連邦の6つの機関も流暢にアラビア語を話す教育者を求めているので、これにも
    応じなければならず、非常に沢山の仕事がきている」と語っている。

    大学だけではない。アラバマ州では非常に多くの中等学校や高校の教員が昨年の夏、一つのコース
    に200名も申し込んだことがある。 また警察署、年配者グループ、コミュニティセンター、ロータリクラブなど
    需要は多彩である。

   その背景
    アルカイダ(Al Qaeda)を追求し、最近のイラク戦争、またアラビア語を話す教育者やイスラム教団体の
    熱意もあって、その言語や文化を知ろうとする要求が高まっているからであるが、歴史的にみると、
    アメリカ人はイスラム教や文化については殆ど知らず、ぼんやりとした程度で、しかもそれは儀式用
    の言語ぐらいにしか考えていなかった。
    しかし、1979年にイランでの人質事件がその勉強を開花させることになった。 しかし1980年代の中
    ほどになると、その熱意は弱まったが、ペルシャ湾戦争が起こると再び関心が高まった。

    ところでイスラム教ネットワークは1990年代の中頃、カリフォルニア教徒によって創られたが最近、数か
    月で18都市から25都市にその部局を増やしていることも手伝っている。

   しかしまだ理解は浅い
    ○多くの学生にはイスラム教の初歩的な知識にも欠けている。例えば、これから公立学校で教員に
      なろうとする学生218名に質問したところ、約半分の者はコーラン(Koran)がイスラム教の神聖な経
      典であることが理解できず、またメッカ(Mecca)が神聖な場所であることについても同様で、7名の
      うち1名はエルサレムのことだと思っていた。
    ○パキスタン、インドネシア、バングラディシが最もイスラム教徒の多い国であることも知らず、この宗
      教の寛容性についても理解が浅かった。
    ○聖戦(jihad)の用語についても誤解が強い。

   本格的な研究意欲
    Eissa博士の生徒の幾人かは長く研究を続け、アラビア語や文化についての知識は自分達の経歴に
    役立つものになるだろうと考え、これに賭けようとしている。生徒の一人は「もしイラクへ行けたら、そこ
    に長く留まり本格的に研究するつもりだ」と言っている。このような学生が少しづつ増えている。

   社会科学習
    社会科教員もニュースを授業に積極的に取り入れようとしている。CNN, National Geographic, Doyle
    などから絶えず最新の資料を採り入れ、また戦争、生物兵器、戦争小説、イスラムの歴史などを地教
    委からのガイドラインがなくても利用する授業が増えている。

  コメント ご覧のとおり。今までとは違って彼らにとって異教、異教文化であったものへの本格的な研究の
        取り組みもみられるようになった。

話題 U スナック菓子禁止等の学校規則はつくられるか?

    先に最近のアメリカの教育の話題のなかでも、この問題について述べたが、確かにアメリカでは『肥満
    人口』の増加が問題であろう。全米健康・栄養試験の1999年度の調査によっても、大人、子供ともに
    1980年に較べて15%も増えている。

    そこで最近、オレゴン州議会でも法案をつくって「学校内で使ったり、売ったりする食物は、それがキァフ
    テリアて゜あろうが自動販売機やメニュー・ウンドゥズであろうが、すべて連邦公認の食事基準に合致する
    ものでなければならない」とした。 【資料】OregonLive 会社/Associate Press (3/17/2003)

  法案
    前述のような趣旨である。すなわち、Bill Morrisetteさんら数人が提案したが、「子供達はごく当たり前に
    コカコーラやキァンディ簡易食堂での食物を昼食にしている。 例えばW.A高校の生徒控え室には4台の
    自動販売機があるが、一台はチップス用とキァンディ用、他は清涼飲料水とジュース、水用である」
    学校は昼食時にはこれらを使用禁止にしているが、しかしメニュー・ウンドウズを通してポップ・チップスを
    買うこともできるし、他の時間には、いろいろな生徒のグループが資金集めのためにドーナツやオーティス
    スパンクメーヤーといったような菓子を売っている。ある3年生はピンク色の砂糖の衣を菓子に振りかけな
    がらおお忙しである」

  しかし法案は難航している
    それらの自動販売機やメニュー・ウインドウズによる販売は大きな事業である。例えばSalem教委はペプシー
    コーラ‐と十年500万ドル契約を結んでいるし、A.M中等学校もペプシ‐ボトル会社と6,000ドルと交換に全体
    の食物の25%について委託する契約を結んでいる。 その他、賛成、反対については次のメイ‐ン州の場合
    と同じである。

  メイーン州の場合
    メイーン州でも難航している。すなわち最近、メイン州議会教育委員会は「学校で菓子とそーダー水を売る
    ことを禁止する」法案を全会一致で(12-0)否決して、これを2004年度議会へ繰る越すことにした。そして当局
    が更に調査して栄養に関するガイドラインを作ることが必要であると勧告した。 【資料】Portland Press
    Herald (Main)(3/18/2003)

   法案
    ○余りにも甘い糖分の多い食べ物や飲み物を校内で禁止する。いかなる物についても8グラム以下とする。
    ○放課後も同様。また夜間や週末に学校を利用する場合も同じ。

   批判(賛成と反対)
    ○どこにでも良い物と悪い物とがある。それをいかに利用するかのライフスタイルの問題である。
    ○体重をコントロールするためには、バランスのとれた食事制限こそ重要である。また適当な運動が大切
     であって、食物を禁止することではない。
    ○地方教委の取り組む問題ではなく、一般大衆の問題である。
    ○ある関係のグループは全面禁止ではなく具体策として、カロリーは10%を限度とすること、糖分は35%を限
     度とすることと提案している。
    ○新鮮な果物、ベーグル、サンドイッチ、ジャーキー、ヨーグルト、果物のドリンクとともにチップスやクッキィ
     も売って、それらの善用を図るへきである。

   現状
    全米で20州が同じような学校規則を制定しようとしているが、しかしその法案が通ったところはない。
    例えばテキサス州上院教育委員会でも菓子やソフトドリンクを売る自動販売機を学校の授業日にストッ
    プさせる法案を審議している。その法案はその他にミルクや太る中身をもった食べ物も含めているが、
    やはり学校財政や関係グループの損失、生徒の“選択の自由”、コカコーラ‐会社などの反対ロビー
    活動など他の州の場合と同様に難航している。(Houston Chronicle 4/1/2003)追記

  コメント 国家的に重要な問題であるとの共通認識はあるが、最近の教育財政難とも関連して果たして
        法案が通るか否かは不透明である。

 2003. 3. 28記                  無断転載禁止