1 チャーター・スクールは高い学力水準を基本にすること。
「他の公立学校の生徒と同じ基準によって、チャーター・スクールのそれを計ること」と州法で
規定することが必要である。 もしそうでなれれば、公立学校の枠外に追いやってしもうからで
ある。しかし、どのようなカリキュラムをどのような方法で教え、生徒を向上させるかについては、
そのスクールに任せて自由にさせるべきである。
【コメント】 教員組合でさえ、このような見解である。わが国でもチャーター・スクール( コミュニティ
・スクール)創設の動きがあるが、この点が曖昧である。 有志・団体も行政当局も、このハ
ードルを超えなければ、しっかりしたスクールは出来ないであろうし、仮に創ったとしても長
続きしないであろう。
2 チャーター・スクールの生徒は州や地区の他の生徒と同じテストを受けること。
アチーブメントテストは完璧でないが、しかしそれによってチャーター・スクールの成績を他の
公立学校の成績と比較することが必要である。 またそのテストによって何が出きるか、何が
出来ないかを知ることが出きる。 その他の部分の評価については、そのスクールと教委とが
共同して評価基準を採用すべきである。
【コメント】 県や地教委ごとの共通テストがない、わが国にあっては、その客観性を計る基準がない
ので、早く共通テストを創ることが先決問題であろう。
3 チャーター・スクールには免許をもった教員を採用すること。
いろいろなチャーター・スクールに適した教員免許を州法で制定しておく必要がある。 その際、
教える科目の知識や技能は是非とも必要であるが、しかし同時に、それを生徒に伝える方法、
生徒の成績を評価する方法や工夫も重要であるから、それを取得するプロセスも明記しておくこ
とも必要である。
【コメント】 従来からある教員免許のみならず、チャーター・スクールの特質を考えて、いろいろな免
許を想定していることは現実的な提言といえよう。 しかもこれを個々のチャーター・スクー
ルに勝手に採用させるのではなく、州法で規定し、その証明を与えた者に限るなどと提言
ていることはわが国でも参考になろう。
4 チャーター・スクールの職員には地教委と団体交渉する権利が与えられること。
チャーター・スクールには、ややもすると団体交渉・協定を結ぶ権利が認められないことがある。
また時には教育目的のためではなく、政治目的に利用される場合がある。
団体交渉は教職員にとっては必要なことで、組合はいかなる被雇用者の権利の縮小に同意して
はならない。 もし権利放棄条項を許す場合は、法律でそれを明記すべきである。
【コメント】 組合らしい事項である。 しかし権利放棄条項も想定するなどチャーター・スクールに配慮
している点は弾力的といえようか。
5 チャーター・スクールは地教委の認可が必要である。
チャーター・スクールは他の公立学校にも良い刺激を与えるはずである。従って、地教委との関
係を結んでおく必要がある。全くそれから離れて独立しておれば、地方の教育に望ましい効果を与
えないであろう。
チャーター・スクールが新しい試みをやったり、ユニークな手法で技術を使ったり、親の参加がある
過程で効果的があったり、また時間やスペースの新しい使い方、革新的な手法などは、同じような
生徒を抱える学校にも広げることができるようにしておくためにも、地教委との関係を維持しておく
ことが必要である。
【コメント】 このようにチャーター・スクールの積極的な面も念頭におき、それだけに常に地教委との
関係保持を提言している。 アメリカのチャーター・スクールには地教委によって認可され
たものの他、州によって認可されたもの、大学によるもの、また親や教員の意志によるも
の、コミュニティのグループによるもの、民間運営のチャーター・スクールなどさまざまで
ある。 それだけに、そのすべてについて地教委との関係保持を強調しているのであろう。
わが国にあっては、アメリカほど多様な形態はとられないように思われるが、その趣旨は
参考になろう。
6 チャーター・スクールは公開を原則とすべきこと。
チャーター・スクールは特別に認可されたもので、制約も少ない。 それだけに責任も負っている
し、システムの改革にも寄与できる。 従って出来るだけ公開すべきもので、その項目は、生徒や
職員の人口に占める割合、特に必要とする生徒の数、毎年の財政監査の結果、アチーブメントテ
ストの成績、生徒の出席率、職員の出勤率、教職員の転任状況、実際に親が参加した場合の効
果、卒業率などがそうである。
【コメント】 わが国のチャーター・スクールにとっては厳しい条件になろう。
以上のように見解を述べて次のように総括している。 すなわち、【コメント】 ご覧のとおり。 教員組合のAFT でさえも今や反対の段階を過ぎて、『学校選択』、『教育改革』
チャーター・スクールは真の教育改革につなげることができる。 新しいアイディアを実験的にやってみ
たり、新しい方法を先導的にテストしたり、練られた学校の統治をいかに構成するかなどについて実験
的な役割を真剣に果たすならば、それは正しく国民から支持されるものになるであろう。
チャーター・スクールは政治的に強くサポートされてきた。 各州は1991年から州法を制定し、その数
は連邦教育省によれば、1999 - 2000年度には約1800校に達しているが次のような見解である。
チャーター・スクールには、いろいろなグループのものがあり、親と教員の連携によるもの、地域
社会のグループ、大学、利益追及の会社運営によるものなど、またあるものは新設校であり、あ
るものは既存の公立学校からの転換校であるが、その多くは特別なカリキュラムや指導法をもっ
て公立学校教育に幅広い学校選択の道を開いている。 今や教育における重大関心事となって
いる。
1 留意すべき点
○ 多くのチャーター・スクールは比較的、同質の生徒を擁しているが、これは問題である。
すなわち、Michigan州のある研究によれば、最も少ないコストですむようにするために生徒を選ん
で受け入れている。また人種や社会的、経済的、学習成績による分離政策も採られているし、特
殊教育についても同じことがいえる。
○ 『責任を果たすこと』: Accoutability の定義や方式も一定ではない。 もっとも伝統的な評価方法
にも問題があって熱心な教育改革論者には欲求不満のものになっているが。
○ 大きく得点を伸ばした成功例もあるが、あるものは苦闘し失敗例もある。 これには生徒や親たち
の社会的、経済的地位(status) が大きく関わってくる。
○ 利益追求の会社に雇われた教員の多くは、極めて教職経験が浅く給料も少ない。 またその低い
給料に甘んじても、そのかわりに自治と革新的な教育をしたいと望んだ教職経験のある教員も、
重い作業量と尊敬を失われることによって欲求不満に陥って燃え尽き現象も起きている。
2 提案
○ 厳しい学力水準を促進するような教育改革であること。
○ 中央主権的な意志決定ではなく、スクールの意志決定を分かち合うような方式であること。
○ 多様な教育を提供すること。
○ 骨の折れる作業や事務的な仕事は排除すること。
○ 教育者と親と地域社会が“自分たちの学校”として固く連携すること。
○ 高い責任を果たすこと。
○ すべての生徒に開かれていること。( どんな生徒でも受け入れる)
○ 被雇用者の権利が守られていること。
3 付記 最近、NEAは4州で、NEA指導のもとに実験校を創った。 NEA's Charter School
Initiative :CSINEA
【コメント】 ご覧のとおり。 とくに実験校: CSINEA の今後の推移に注目したい。V その他