272. 最近のアメリカ(U.S.A.)の体罰状況・一部根強く残っている


 杉田荘治


ばじめに
    アメリカ(U.S.A)では公立学校における体罰は少なくなってきているが、しかし依然として
   一部根強く残っている。
 例えば名古屋市在住のアメリカ人と話していると、彼らの多くは
   [今ではアメリカでは教員による体罰は違法です]というがそうではない。 適法とされる体罰
   は一部の州や教育区で残っている。

体罰容認の州法
    次の19州である
   Alabama  Arizona  Aakansas  Colorado  Florida  Georgia  Idaho 
   Indiana  Kansas  Kentucky  Louisiana  Mississippi  Missouri  
   North Carolina  Oklahoma  South Carolina  Tennessee  Texas  
   Whyoming
  (USA TODAY 2012年4月22日号)

    これを第252編と比較されるとよいが二州が禁止に転じた。New Mexico, & Ohio

     なお注意すべきは体罰を州としては容認していても地方教委が禁止していると
    ころは禁止である。

   Wikipedia, the free encyclopedia 2019年6月6日号も[19州、その多くは南部
   の州であるが体罰は禁止されていない。 連邦教育省の統計では、ここ20年の
   うちに
ずっと減ってきているが、2006年全米で約22万3000人の生徒が体罰をう
   けてい
]と記している。


     Corpuna Corporal punishment in the U.S. school, by C.Fassel, 2014年3
   月号も同様である。
すなわち、[U.S.A.ではかなり前、体罰は消滅したと考えられているが
    そうではない。 1977年の体罰とする連邦最高裁判決は今もって維持されている。 州法で
    禁止した州も31州だけである。 現にWhyoming やMissouriは2003年に廃止しようとしたが
    出来ず、North Carolinaは2007年に、またLouisianaは2009年に、Texasは2011年に廃止を
    検討したが、その何れも改正することはできなかった。]と述べている。

     またその例としてMississippe州では20111ー12年度に151地方教委管内の
   三分の二に当たる学校で体罰が行われているとしている

 体罰の数

     最近の全米的な統計はない。 ただ2009
年ー10年推定の数として約7000の地
   方教委管内で約72000の学校で実施されたとしている
(civil right データー コレ
    クション)
 またabout 2.2 million children were subjected to the practise in
   2012. とThe citizen co.が2014年5月14日号で報じている。しかしその数は疑
   わしい。


      なお第252編を参照されるとよいが、そこでは2005年度ー2006年度の
   状況  2008年5月発表
『全米体罰禁止連合』:the National Coalition to
     Abolish Corporal Punishmentのそれであり、またその出処は連邦教育省統
    計センターであるが全米的な統計である。 そこでは全米の公立学校で22万
    3190名の生徒が懲戒として体罰を受けている。 その全米生徒の割合は0.46%
    であるとしている。
 ワースト10についても大きな変化はないと思うが、これにつ
    いても同じく第252編を参照してください。
     

 なぜ体罰は根強いのか

     合憲とされた連邦最高裁の『イングラハム対ライト』1977年判決が影響している。
   これは現在でもアメリカでは体罰判例としては実質的には唯一のものであるが、そ
   れだけに重要視されている。
 これはフロリダの中学生に対する体罰について合憲
   とされたものである。しかしこれを単純に『体罰の容認』ととってはならず、あくまで
   も教員による体罰は合衆国憲法修正第8条に定められている『残酷で異常な懲罰』
   には当たらないとし、また修正第14条に規定する『厳格な適法手続き』を経て行使
   するほどのことではない、とされたのであるが、容認論者にはうまく利用されている。

    従って、州法や教委規則などで体罰禁止とされているところでは、勿論、体罰は違
   法であるし、また禁止ではない場合でも、いろいろな条件が付けられている時は、そ
   れに拠ら
なければならない。  その他、第26-1編を参照してください。

     また、Spare the rod, spoil the student,すなわち叩くことを惜しめば、結局その生
   徒を駄目にしてしもう、という信条が根強いこともある。
 最近でもChattanooga
   Times Free Press, Tennessee, 20 October 2013 もこのことを記している。


 
おわりに
     以上、今もって19の州は体罰容認の州法をもっていること、また最近の全米的な
    統計はないこと、なぜ体罰は,根強いのかについて述べた。

  平成26年6月19日記       無断転載禁止