杉田荘治
はじめに
アメリカ(U.S.A.)では公立学校の生徒が懲戒として受ける体罰の数は減少してきている。
すなわち最近の統計によればその数は全米で22万人余で、全米の公立学校生徒の割合
では0.46%であるが、例えば1980年度では90万人余て゛、その割合は3.4%であったし、
2003年度は30万人余でその率も0,6%であった。
一方、停学は2006年度には332万人余でその全米公立学校生徒の割合は6.9%に及んで
いる。 しかしその数は2000年度には305万人余でその割合は6.6%であった。
以下、このことについて体罰については主として[全米体罰禁止連合]:NCACPの資料
により、停学については連邦教育省人権擁護局の資料によって見ていこう。
体罰
2005年度ー2006年度の状況 2008年5月発表
『全米体罰禁止連合』:the National Coalition to Abolish
Corporal Punishmentのそれであり、またその出処は連邦教育省統計センター
である。(219編参照) Table 169 & 170
赤色の21州が体罰を認め |
○ はじめに述べたように全米の公立学校で22万3190名の生徒が懲戒として体罰を受け
ている。 その全米生徒の割合は0.46%である。
しかし体罰を州としては容認していても地方教委が禁止しているところは禁止である。
したがって全米的には少なくなってきている。
○ ワーストの10州もほとんど変っていないが、ただKentuckyにかわってFloridaが入った。
ワーストの順でMississippi
7.5% Arkansa 4,7% Alabama 4.5%
Oklahama 2.3% Louisiana
1.7% Tennessee 1.5% Texas 1,1% Georgia 1,1%
Missouri
0.6% Florid 0.3%
である。 しかしそれらも2003年度と比較しても減っ
てきている。 例えばMississippiは(9.1%から7.5%)、Arkansasは(7.6%から4.7%)など
である。 なお10位に入ったFloridaといえども、その率は0.3%である。
体罰容認の州 受けた生徒数 その%
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左表のように州法は容認でも 地方教委が禁止していて 実際には全くない州がある。 Wyoming ワースト10州
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体罰は減少傾向にある
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ご覧のとおり、1976年 には3.5% もあったが、 2003年には0.6%である。 |
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停学
2010年年5月発表 2006年度 公立小学校・中等学校 停学状況は次のとおりである。
停学になった生徒数 3,328,750 |
内 男子 2,272,290 女子 1.056,470 |
全米生徒での% 6.9% ( 男子 9.1% ) ( 女子 4,5% ) |
白人 4,8% 黒人 15.0% ヒスパニック 6,8% アジア系 7.7 % 原住民 7..9% |
停学は増える傾向
2004年発表 2000年度分は次ぎのとおりであったが、前述と比較されるとよい。
停学になった生徒数 3,053,449 |
内、男子 2,182,273 |
内、女子 871,176 |
全米生徒での割合 6.6% (男子 9.2%) (女子 3.9%) |
参考 白人 5.1% 黒人 13.3% ヒスバニック 6.1% アジア系 2.9% 原住民・太平洋 7.7% |
この傾向については次の資料でも知ることができる。
9.11テロ事件以降アメリカ全体の
緊張感などの要因も加わるので、単純に数だけを比較することはできないが、しかし体罰は
減ってきているが停学は増加しているといえよう。
それは少し旧い統計であるが次の表からも理解されよう。
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左の資料はRethinking Schools であるが、その出処は連邦教育 市民権局である。 U. S. Department of Education Office for Civil Rights % も1973年度には,3.75%であっ が、1997年度には、6.92%と増え てきている。 |
留意事項
ここで注意しておくことは、アメリカでは小学生に対しても懲戒として停学などが課せられる
ということである。 従って本文に記載した体罰、停学に関する数字はすべて、小学生を含む
すべての公立学校児童、生徒のことである。 なおこのことについては第26. 体罰問題 その三
..アメリカの州規則・教委規則【原典】を参照してほしいが、その一部を下記しておこう。
○ Pennsylvania, Kane Area 教委規則
【註】 このように小・中・高校を通して、叱責から退学まで可能である。
○ Detroit 市教委規則
【註】 このように、教師を攻撃した生徒、喧嘩、ギャンブリング、タバコ所持、不服従、などは停
学に。 そのさい年齢大きさを考慮して実施される。
○ Indiana 州規則... Indiana Public School Board of Commissioners
DISCIPLINE CODE SUMMARY
【註】 このように小・中・高の区別なし。違反行為の程度がポイントである。
○ Indiana 州 Mt. Comfort
Elementary School Student Handbook OUT-OF-SCHOOL
SUSPENSION
【註】 まさしく小学校の規則に、このように停学が規定してある。
○ Arkansas州 Code 1999
Changes 、Code 6-18-507
【註】 このように、いかなる生徒に対しても、10日間までの停学にすることができる。
また、体罰を親が同意しない場合は、[それに代わるべき懲戒を行え] と規定している例
が一般的である。 Texas州 Garland Independent
School District,
【註】 このように体罰に代わるべき懲戒を確実に実施すべきと規定している。
おわりに
体罰は減り停学は増える傾向についてみてきた。 統計を基にした論考であるから、い
ろいろな領域で利用することができよう。 人権尊重の高まりとともに、人種差別、性差別
などを恐れるあまり、教員が懲戒として行使する体罰はなにかと問題を引き起こすので、
それに替わる停学処分を選択する理由もあろう。 “触らないほうが賢明である”方策であ
る。 またちょっとした生徒の違反行為についても停学にするゼロ・トレラン政策もこの傾
向の原因になっていると考えられる。
2011年(平成23)9月17日記 無断転載禁止