杉田荘治
はじめに
今、アメリカ(U.S.A.)では州を挙げて、ある特定の人物について、その幼児教育以前の教育
から小学校、中等学校の教育を受けた後、さらに大学教育(コミュー二ティカレッジを含む)後、
就職・職場に至るまでの長期間にわたって、その教育の成果を追跡調査する制度が始めら
れ、これを実施するところに連邦政府が助成金を支給している。
もっとも、ある特定の人物といっても、それはいくつかの型を選び出して追跡するのである。
また総ての州ではなく20州前後について助成されている。 しかし今までの[K-12]教育に止
まらず[PreK-20]教育にまで拡大して、追跡調査する制度は、わが国でも参考になろう。
その州と実施時期
2002年にETAAという法が創られたが、実際には2006年度から14州に連邦政府から助成金
が支給され、2009年度には20州になっている。もっとも継続して支給されているところはなく、
その要件を満たしていないとして打ち切られ、また復活支給されるのが普通である。 それほ
ど支給基準が厳しい。
Statewide Longitudinal Data Systems Grant Program
SLDS と呼ばれ2009年度は次の20州である。 Arkansas Colorado Florida Illinois Kansas Maine Massachusetts Michigan Minnesota Mississippi New York Ohio Oregon Pennsylvania South Carolina Texas Utah Virginia Washington Wisconsin [ies: NATIONAL CENTER, EDUCATION STATISTICS:] |
方法
前述したようにいくつかの人物の型をきめて、その人物が幼児から幼稚園教育を受けて、
どのように成長したか、その後、小学校教育や中等教育(高校)を受けて、どのように向上
したか、さらに大学(コミューニティカレッジを含む)を受けて、どのように成長し、しかも職
場でその教育の成果をどのように活かしているかを追跡調査するのである。
今まで[K-12教育]に止まり、しかもその連続性について不十分であったものを[PreK
- 20
教育]にまで拡大し、しもか連続して系統的に教育の成果を検討する方法である。
なお今まで助成金を申し込んだ41州について、生徒の出席状況、懲戒の状況、ホームレ
ス、移民、SATやAPテストの成績など多くの項目について詳しくチェックされ、その項目調
査はまだ始まっていないか、ようやく始まったか、順調に進んでいるかなどと区分されてい
る。
Main州の場合
Maine州は標準的なものと考えられるので、これを例にして具体的にみていこう。
この州は2007年度より始められ、連邦政府から助成金を受けたが、2008年度には受ける
ことができず、2009年度に再び復活した。 2009年度の助成金は730万ドルである。
2007年度で実施したこと
○ 州全体の教育についての[辞書]をつくった。 すなわち、データーについての用語を
統一して共通理解する手立てをつくったのである。
○ 幼児の教育から職場にいたるまでのデーターの保管庫をつくった。(Data
Workhouse
PreK-20)
○ それぞれのデーターについて、最初にアクセスするページを決めた・
○ どのような型の人物をデーターとして使うかを決めた。
○ これからの調査を確実にするため関係者のトレーニングを実施し、その能力を高めた。
2010年度に実施すること
○ 教員の資格制度を再検討する。 ○ 成人教育を再検討する。
○ 州の他の機関との連携について再検討する。
・ 早期幼児教育プログラムはこれでよいのか。
・ 中等教育を受けたあとのプログラムはこれでよいのか。
・ 労働人口の発展はどうなっているか。 その今までの教育との関係はどうか。
○ 今までのデーターの取り方について再検討する。
○ 関係者のトレーニングは今のままでよいか再検討する。
[コメント :このように今進めている各データーについて再検討しながら進めている。
また、これらを総合して140万人以上のデーターをつくる。 また教育のギァッ
フを縮めることにも役立てる]
また次のことを新たにプロジェクトチームをつくる。。
・ こどもの発達サービスについて ・ 4才児のプログラム
・ 成人教育について ・ 職業と技術教育について
・ 健康と福祉について
・ 州のなかの4年制大学から7校を選んで、その教育制度を再検討する。
・ 州のなかの2年制コミュニティカレッジから7校を選んで同じように検討する。
・ 州の職業会議で職業の領域について再検討する。
・ 州の卒業生についてのデーターを整理する。
・ 州の27の高等教育研究所相互間の連携を再検討する。
・ 学位をとった主要科目のデーターを清算機関で再活用する。
補足
ダンカン教育長官も[このように系統的に追跡する制度は、われわれに今後進むべき
道への指針を与えてくれるものとなる]、[今、われわれはどこにいるのか、どこに危険
や問題点があるのかを教えてくれる]、[教員や校長にどのような学習指導をしたらよいか]
[親にこどもにどのような教育を受けさせたらよいか]などについて示してくれるであろうと
語っている。
[参照資料:]
Maine Statewide Longitudinal Data System, Post-gazetta.com NEWS/EDUCATON
2010年5月22日号、 ies NATIONAL CENTER EDUCATION STATISTICS,
SLDA
FY09 ARRA Applicant Scores and Review Process
おわりに
ご覧のとおり今まで[K-12]教育にとどまっていた州のデーターを[PreK-20]教育に拡大
して、しかもバラバラであった資料をいくつかの型によって垂直的に追跡しようとするもの
である。 ダンカン教育長官も語っているように、今われわれはどこにいるのか、どこに危険
や問題点があるのか、そしてどこへ向かったらよいのかなどについて良い指針になろう。
今後、数値的なものも出てくると一層その点が明らかになるであろう。
2010年8月31日記