杉田荘治
はじめに
最近、ある高校長から[教員がPTA会費を負担しなくてもよいか。ついてはアメリカでは
どうなっているか?]と尋ねられた。そこで実情を調べて回答したが、ここではそれを補足
して要点を述べることにする。
回答 そのとおりである。 アメリカ(U.S.A.)でも教員はPTA会費を負担しない。
例外的にPTA組織と離れて、草の根運動として親と共同して運動を展開して
いるような場合は別である。
いくつかの具体例
1 Saddle Rock 小学校(New York市) 2009-2010 PTA DUES(会費)
○ 毎年、Saddle RockPTAは生徒の家庭(世帯)から会費を集めます。
○ これらの会費は私たちが資金調達したお金とともに、本や授業に役立つ備品を購
入したり、体育に役立つスポーツ用具、懇談、先生たちへの補助的支給などに使
います。
○ またPTAは一年を通じて国際デイや文化的な行事にスポンサーとして役割も果た
します。
もし、あなたがクラスの代表を決めるオープンハウスの夜に出席されていなかったな
らば、下記の用紙に記入して、現金か換金できる小切手をクラス担任にお渡しださい。
会費は1世帯につき20ドルです。
会費のことはPTAの趣旨からも理解されよう
全米PTAはその使命などについて次のように述べている。 Mission, Vision
& Values
関係箇所
○ 資金調達について 親にとってはPTAの資金調達は大切なことです。しかし同時に
それ以上の価値あることもしなければなりません。
○ PTAは家庭と学校とをつなぐブリッジのようなものです。
○ PTAはこども教育について学校と提携する親たちを激励し支えるものです。
○ このような使命は設立以来、昔も今も変わっていません。
このように、教員を会員としながらも親たち自身の自主性、財政的な役割、学校とのブリッ
ジのような働きなどを通じて、こどもの利益になることを繰り返し強調しています。 このこと
から教員に会費を負担させることは、却って親たちの自主性を損なうことにもなろう・
(参考 1) 全米PTAへの負担金(平均)
・ 単位PTAの会員一名につき、全米PTAへ年額 1ドル75セント
・ 同じく 州PTAへ年額 2
〜 4ドル
・ 同じく 郡PTAへ年額 25セント
[資料: PTO TODAY, PTO v PTA :Difference at a Glance ]
(参考 2) Wilkipedia, the free encyclopediaによれば、
・ アメリカ(U.S.A)にはPTAまたはPTSA(生徒も参加)がある。
・ 公立・私立の幼稚園から8年生までの学校のほとんどはPTAか、これと同じような
PTOをもっている。
・ 高校や早期幼児教育についても、そんなに多くはないが、ある。
・ PTAは全米PTAの単位(part)であり、1897年に設立された。 シカゴに本部のある
非営利団体である。
・ PTAは学校を支援し、親たちの参加を奨励し、教員を支え、家庭のイベントを組織
化することである。
・ PTOはPTAと同じようなことをやっているが、州や全米レベルのものはない。
(参考 3) PTA-Wikepediaによれば、
・ 全米で2万3,000以上のPTAがある。しかし全米で90%以上の学校がなんらかの保
護者と教師によるグループを持っているにもかかわらず、PTAに加盟しているの
は、その25%である。残りの75%はPTO,HSA, PCCなどと呼ばれ、PTOの割合が高
い。
それはPTAの方針や運営方法に賛同しないもののほか、私立学校には宗教学
校が多く、全米PTAよりも母体の宗教団体のガイドラインに沿った活動をするため
である。 なお、PTOについては、PTO社は[PTO Today]雑誌を創刊して、会費を
払えば、全米PTAと同じようなサービスを受けることもできる。
わが国の高校PTA
アメリカでは全米PTAなど全米的な組織に加入せず、高校単独でPTOとかPTSOなどの組
織をもっていることが多いが、わが国では義務教育諸学校と同じくPTAをもち、しかも都道
府県別、全国PTAをもっている。 しかし最近、豊橋市の河合四郎氏なども指摘されている
ように、授業料無償化の法制にともない、会費の問題にからめて、学校安全会、高体連、高
文連などの加盟費負担が問題視されることも起こってきている。 しかし例え部活動をして
いない生徒にとっても、その学校の各部が競技大会などで活躍し、学校の“名”を挙げれば、
それは学校を元気づけ、ひいてはすべての生徒(親)の教育的利益になるのである。
PTAの規則、内規、申し合わせ事項などで、加盟費負担のことを定めておけば問題はな
かろう。
PTA活動について(参考意見)
[PTA活動は形骸化している。]、[一部役員の過重になっている。]、[参加したくても仕事や
家庭の都合で無理だ。]などの批判や意見があることは周知のところである。 現に杉並区
和田中学のPTA離脱の動きもあった。
そのさい本文で記載したアイオワ州Longfellow 小学校PTAのように、年度の初めに年間
の行事一覧をその時期なども含めて具体的に示し、予め参加できそうなものについて登録
させる方法が参考になろう。 そのさい委員会活動というよりは、もう少し自由なPTA内のグ
ループ活動にウェイトをおくようなものにすれば、参加意欲や喜びも強まるように思われる。
勿論、PTAの行動としての制約もあろう。
おわりに
ご覧のとおり、アメリカでも特別な場合を除いて教員はPTA会費を負担していない。 その
理由や具体的な事例、会費の年額、親たちの資金調達のこと、またわが国の高校PTAに
ついての問題点やその考え方、さらにはPTA活動についての参考意見などを述べた。 そ
れなりに役立つだろうと考えている。
2010年6月15日記