杉田荘治
前述したように44才あるが今、アメリカ第3位の大きな教委の教育長として、失敗した学校を
閉鎖したり再開したり、また効果を挙げていない教員を解雇するなど困難な問題に果敢に取り
組んでいる。
オバマ次期大統領との関係については前述した他に、このようなこともあった。 すなわち、
2005年10月、オバマ上院議員はシカゴのドッジ・ルネッサンス・アカデミーという学校を視察
したが、この学校は以前「失敗校」であったが、ダンカン教育長が新しい職員によって再開さ
せ成績を挙げている公立学校であった。 その視察にはオバマ氏は1時間以上も学校図書館
で職員と語り合い、教育の難しい点について真剣に質問したが、ダンカン教育長は「今まで彼
ほど時間を掛け教育の真髄に迫るような質問や討議をしてくれた政治家はいなかった。」と語っ
ていた。 なおこの学園(公立校)については別途後述する。
今後の方向性
このことについては既に第222編で、就学前教育(0才から5才)、初等中等教育については
現行のNCLB法に関連する“一発勝負”的な州標準テストに重点を置き過ぎる学校評価など
の見直し、教員給料制度の改善、その他チャータースクール、バウチァ制度の拡大などについ
て触れたが、いよいよ教育長官もきまり、政権移行チームも動き始めているので、次第に明ら
かになってこよう。
○ ブッシュ政権が州の標準テストに重点を置き過ぎたことを徹底的に検証しながら、しかし
学校の結果責任も強く求めていくものと思われる。 そのために学校を改善していく新しい
アイディアと方法を打ち立てていくことがダンカン次期教育長官に期待されるが、成績不振
校をチァータースクールに変えることも増えるのではないか。一方、特別な能力を伸ばすた
めのチァータースクールもそうであろう。
○ 校長や教員のトレーニングが強化されよう。
○ また、底辺校を良い学校に変えるためのモデル校が創られることになる。 ダンカン氏も
「教育は今の時代の公民権運動である」: "The civil rights issue
of this generation"
といっている。
○ 勤務成績反映給料制度:Merit pay systemを教員組合と協議しながら進めることになろう。
それは教員の資質向上と密接に関連していると考えるからである。 オバマ次期大統領
も「資質のある良い教員を多く採用し、定着させ、テストのあり方を改善し教育予算を増やし
たい」といっているが、積極的な教育改革論者に組するのか、また強力な教員組合と強く
連携しながら、これを進めるのかは明言していない。 次期教育長官にこれを託することに
なろう。
モデル校としてのドッジ・ルネッサンス・アカデミー
オバマ政権の移行チームはすでに、このドッジ ルネッサンス アカデミー(Dodge
Renaissance Academy)と接触して、新しい会議をもっているが、今年12月16日に次期大統
領、バイデン次期副大統領、ダンカン次期教育長官が打ち揃って、このシカゴにある公立学
校を視察した。(写真: DEMOCRATIC UNDERGROUND.COM)
シカゴ市西部にある。 生徒数 約400名 前幼稚園から8年生までの公立学校
○ 前述したように2002年に「失敗校」として閉校になり、その後、矯正プログラムが実施され
立ち直り優良校に変った。
○ 州標準テストで数学 80%以上が優または良。 リーディングでも70%が優または良。
○ スポーツなどにも力を入れている。 ダンス、美術、ドラマ、フットボール、バレーボール、
バスケットボール、チアリング、テニス、陸上競技、ソフトホール、ゴルフなどである。
○ 校訓は「住民、地域に高く期待され、生涯にわたって学び、積極的に社会に貢献できる
人になる」である。
市当局も2010年6月30日までの計画に、他の3校とともにローカルスクール審議会のメン
バーに指定しているが、今後連邦政府の教育改革関連の学校として注目されている。
【参考資料】 The New York Times, 2008年12月16日号、同18日号、DEMOCRATIC
UNDERGROUND.COM, Dodge Renaissance Academy発表分
おわりに
ご覧のとおり新教育長官に44才のダンカン氏が就任することになった。州標準テストに大き
く依存する学校評価は見直されることは確実であるが、しかし成績不振校の閉校やチァーター
スクール化など結果責任も強く求めていくことになろう。また指導教員や校長の更なる資質向上
のためのトレーニングも強化されるが、そのさいシカゴのドッジ・ルネッサンススクールをモデル
校とすることは確実であろうから、これについても付記した。
2008年12月29日記