杉田荘治
はじめに
学校教育法規則を「土曜日については、地域や学校の事情によっては休業日としないことが
できる」と但し書きをつけて改正したほうがよい。
学習指導要領で授業時間が増えるのはよいことであるが、現行のままで授業時間を増やせ
ば無理が生じる。また一部で行なわれている変則的な土曜日の授業形態を改めることもできる。
このことについては、約 4年半前に第102編で次ぎのようなことを述べた。 すなわち、
○ 公立学校と学習塾や予備校との競争
「塾のほうかが楽しい」が普通になるようでは、公立の負けである。一部の教員がよくい
う「人間を育てる」公立教育だけでは信頼は得られない。第一、貧しい家庭の子供の教育
を、どのように考えているのであろうか。 事実上、“出校日”が非常に多くなるような公立
学校を容認するくらいの気概と工夫が望まれる。
今でもそのように考えているが、今回は土曜日の半日出校日を取り上げ、併せてアメリカの
最近の動きを参考までに述べることにする。
T 現行で授業時間を増やすことの無理な理由
○ 日によって7時間の授業日を設けたり増やしたりしなければならない。
○ 学年初め、学期初めにも授業を実施しなければならない。
○ 学校行事を精選するとはいいながら必要なものもカットしなければならなくなる。
○ 長期休業日の短縮など。
なるほど授業時間の確保という“帳簿は合う”であろう。 しかし相当の無理が生じることは何
よりも現職教員が知っている。
○ 例えば7時間目の授業はどうか。 多くの生徒は疲れた状態で授業を受ける。
○ 長い休暇後の始業式当日の授業の効果も今ひとつであろう。 第一現行、土曜・日曜の2
連休あとの月曜日には、すんなり授業に入っていけない。 時には3連休である。
○ その他、学校行事のカット。 暑い日が続いているのに新しい学期を始めるなど。
○ また最近、“ダメ教師”などと揶揄する放送番組も多く、誠実に教育に取り組んでいる教員
にまで、その被害は及んでいる。 「長い休暇があってよい」、「土・日も休み」とくる。 それ
ではいっそのこと土曜・半日出勤にしたらどうか。 「先生は御苦労さまです」と評価も変わろ
う。 なお勤務時間については季節なども考慮して弾力的に措置できる部分もあるように思
われる
○ 考えてみれば土曜日の「半日出校日」も案外よいものである。 「ああ、今日は半日、午後
は楽しみ」と生徒も教員も考える。 子供を送り出す親にしても、そのような感慨があろう。
○ 第一、貧しい家庭やいろいろな事情のために家で2日間(時には3日)、ブラブラしている子供
の多い実態を忘れてはならない。 なるほどOB教員による補習、児童館などの協力事業、ス
ポーツ行事などは組まれている。 しかしそれでも無為に過ごす子供や有害なことに走りやす
い生徒のいることは多くの関係者は承知している。
○ 学習塾にも通えない生徒、また行かない生徒についても、できるだけ良い教育を受けさせる
責務を担う公立学校が一見“合理的”な理由で授業時間の確保などを推進しようとするところ
に無理が生じている。
○ しかも最近、増えてきている私立学校の多くは、「土曜日も出校日」なのである。
【参考】 学校教育法施行規則(関係個所、中・高校等についても同じ)
第六十一条
公立小学校における休業日は、次のとおりとする。
一 国民の祝日に関する法律 二 日曜日及び土曜日
三 学校教育法施行令第二十九条 の規定により教育委員会が定める日
2008年3月8日記
追記 読売新聞2011年(平成23年)7月6日号、『学び再出発』は次のように報じている。
○ 都市部には塾があるが、ここでは 公立学校が学力の保証に重い責任わ負っている。
(熊本県産山村)
○ 平日の授業を増やすより隔週の土曜授業実施が教育現場に最適である。(国立教育政策
研究所 葉養正明氏)
○ 地元の社会人や学生による吹奏楽団のメンバーを講師として4、5年生の音楽の授業
(埼玉県坂戸市)
○ 6時間の授業がある日はぐったりして帰ってくる。(母親)
○ 授業の公開を条件に土曜授業を事実上、解禁する。(東京都)
全国公立小中学校での土曜正規授業実施状況
全国的には7%にすぎないが、東京都 1889校、 埼玉県 247校、 栃木県 3校、
熊本県 2校
教員組合の態度
土曜授業は否定しないが、労働者の立場から言えば週2日制が崩れる。 5日制の趣旨
からいえば基本的には反対だ、としつつ平日に授業を増やすのもどうか。