202 いじめ二題 −「私は、いじめをしました」のポスター・
             1億円の損害賠償判決


杉田荘治


はじめに
    アメリカ・カリフォルニア州で母親が娘に「私は、いじめをしました」と書いたポスターを持たせて
   校門に立たせる罰を課した出来事があった。 また、わが国でも報じられていたことであるが、
   オーストラリアで1億円の損害賠償判決があった。 これらについて現地のメディアが伝える資
   料によって紹介しておこう。

               「私は、いじめをしました」のポスター

    カリフォルニア州のTemecula Valleyというところで、この5月10日、母親が学校で、いじめを
   した罰として停学処分とは別に娘に「私は、いじめをしました」と書かせたポスターを持って校門
   に立たせる罰を課した。 まずその写真を掲示しよう。

   " I engaged in bullying behavior. I
 got suspended from school and
 this street corner. Don't be like
 me. Stop bullying."

 ご覧のとおり、「私はいじめをしました。
 停学になり街へも出れません。 私
 のような、いじめはやめましょう。」と

 自分で書いたポスターを持って校門
 に立っている。
【資料 巻末

  事実
   1.  カリフォルニア州のTemecula ValleyというところのErle Stanley Grardner中等学校の2
     年生Miasha Williamsが5人の友達と、ある生徒に対して、いじめをした。 それは暴力行為
     ではなく人種差別の用語を使ってなされたようである(詳細は不明)。 そこで、それぞれ1
     週間(5日)の停学になった。 ところがこの学校の処分とは別に母親であるSpann Williams
     さんが娘に対して前述写真のようなポスターを作らせ、登校時と下校時に校門の近くで立た
     せる罰を課して実行させた。
  なお娘の学校のほかに近くのTemecula Valley高校へも
     行かせた。  また停学期間中は携帯電話も取り上げ、テレビも見せなかった。

   2.  このことについて各メデアは「娘は強かった。 しかし母親はもっと強かった」と報じている。
     なお他の5名の生徒も停学最後の日には、これに加わって校門に立った。 ところでMiasha
     は平素は問題行為を起こすような生徒ではなく、いつも身体不自由な子供を手助けしてやる
     ような少女であった。

  その後
      この生徒はその後、「このようなポスターを掲げるようなことはしたくない。 しかし私が受け
     た罰は正しい」と語っているし、母親も「娘は愛すべき子です。それだけにギャングのような者
     にならないように小さいうちに芽をつんでおくのです」といっている。 また彼女は信念の強い
     旧きよき伝統を大切にする人で地域で、いじめ撲滅運動を始めようとしている。

      また同校の副校長Patricia Mathsさんも「このような躾を学校としても支持します。 親は教
     員が知るよりもっと自分の子供のことを知ってほしい」と語っています。

  【資料: Los Angeles Times, 2007年5月18日号、msnbc 2007.5.17、 PE News 2007.5.17】


                 いじめに1億円の賠償判決

     わが国でも報じられていた事件であるが、オーストラリアのニューサウス・ウェルズ州で州最高
    裁は、この5月14日、18才の青年が小さい時に受けた暴力のいじめについて州政府に対して1億
    円(オーストラリアドルで100万ドル)の損害賠償を命じた。

  事実
    BEN COXという18才になる青年が幼稚園と1年生であった時(1994年4月〜1995年9月)、年長
   の生徒から暴力のいじめを受けた。 それは彼が赤毛の髪をしていることのようであったが、気を失
   うまで首を締められたり、またジャンパーを喉に押しこまれたり下の歯が幾つかなくなるまでを打たれ
   たのである。 これが大人の事件であれば、いじめた者は逮捕・解雇されるようなものであった。
   母親によれば「学校の対応も極めて不充分で、いじめは人をつくる、よいことだ」とさえ言っていたと
   憤慨している。

    小児科医、精神科医によれば、彼は、うつ病、不安、分離不安障害、ポスト外傷性圧迫、どもりな
   どの状態であり、家に引きこもったままで、今でも仕返ししてやろうと幻想しているといわれる。 友
   もなくロマンチックな青春の時期もない、わびしい人生を送ろうとしている。

    これに対して州最高裁のCarolyn Simpson判事は、この14日、標記のように約1億円の賠償を
   州政府に命じたのである。 彼の弁護士は「これは12年前の事件であるが、今のことでもある。賠
   償額は新記録になろう」といっている。 なお州政府はこれを不服として別の手段で控訴しようとし
   ているとしわれる。  【資料: The Daily Telegraph 2007.5.15, the age.com.gu. 2007.5.14】
 
  参考  Carolyn Simpson判事とは
     彼女は州最高裁にいる3人の女性判事の1人であるが、以前5年間、学校で教えた経験が
    ある。 その後、法律を勉強して1994年に現職である州最高裁の判事に任命された。 The
    Honourable Justice  【資料: csu.ed.au, alumninews】

あとがき
    ご覧のとおり、いじめをしたことで停学処分を受けた娘に対して、母親が別の罰を課した出来事
   と12年前のいじめに対して1億円の賠償を命じられた事件の2つである。

 2007年6月14日記            無断転載禁止