杉田荘治
はじめに
今やアメリカでは、マイノリティ(少数派人種・民族)でも5歳児以下の幼児をとってみると、
その年齢層の幼児のうち45%も占めるようになってきた。 またそのなかで、ヒスパニック
(中南米系)の増加が著しく、黒人の増加率は極く僅かである。 まず表で示そう。
資料 U.S.A Census Bureau 2005年7月1日現在
左図のように、 ・ アメリカ全体の人口は 2億9641万人余であるが、 そのうちマイノリティは33% である。 しかし5歳以下の幼児は 45%を占めている。(アメリカ 全体幼児数は2030万余) ・ 白人は全体では67%であ るが、幼児では55% ・ ヒスパニックは全体では 14%であるが、幼児では22% も占めている。 ・ 黒人は全体では13%であ るが、幼児では15%と微増で ある。 アジア系は同じで ある。 |
T Washington Post (2006年5月10日)号から
1. 5歳児以下の幼児に限っていえば、マイノリティの幼児が半分近く占めるようになった。 それは
今日、発表された統計局の資料によればヒスパニックの増加が著しいからである。 この1年間
(2004年〜2005年)の幼児の70%は彼らの分である。
2. 従って移民を多く擁するマイアミ、ヒューストン、ロスアンジェルスなどでは、彼らは少数派では
なく多数派になっている。 しかも今後、このように増え続けていくであろう。
3. またある郊外では文化の世代間のギャップや交通問題、ことに彼らに対する交通支援の問題
や就学前教育、いろいろなサ-ビスが大きな問題になってきている。 マイノリティの人々は
彼らに対する早期教育が今後、成功するか否かに関係するので、その現実的、効果的な教育
を強く求めている。 例えば、アーリントン市では低所得層の子供は英語は外国語のようなもの
であるが、その200名に対して無償で早期幼児教育を始めたが、しかしまだ150名が待たされて
いる。
4. 20数年後には彼らは子供をもうけるのであるから、人種・民族の問題は劇的に変化するであ
ろう。政治的な決定、政府公共機関の資源の活用、また人種間の軋轢も単に白人とマイノリティ
との関係だけではなく、例えばヒスパニックと黒人とのそれも無視できなくなるであろう。
“さなぎは将来どのように変化するか”わからないと、ある関係者は話している。
5. しかし圧倒的に多い白人の高齢者を支えるのは彼らである。 一部の白人は彼らが多数派に
なることを喜ばす、なかには彼らの母国へ返すべきだなどといっているが、それは非現実的な
意見である。
6. このように変化していくのであるから、人種・民族間の再提携を図り、グローバルな経済社会
に対応でき、複数の文化について寛容であり適応することのできるものでなければならないで
あろう。
U その他
USA TODAY(2006年5月10日)号も同じ問題を取り上げているが、そこでは不法移民の問題
もあるが、しかし前述の幼児の問題がより大きな問題である、としている。
コメント
ご覧のとおりマイノリティ、ことにヒスバニックの幼児の急増は否応なしにアメリカの社会を
変容させていくことになろう。 このうち公立学校においては今後、理念的な『人種の統合』
は変らないとしても現実的には緩やかな『人種の分離』策に戻るものと考えられるが、次回
は、それについて連邦最高裁判所の態度の変化を中心にして見ていくことにしよう。
2006年6月23日記