杉田荘治
はじめに
アメリカでは半数以上の少年、少女がオーラルセックスをしている。
このことについて最近(2005年9月)、『全米十代妊娠予防運動』が報告しているので、先ず
これを要約し、次いでNew York Timesもこの件について論説しているので、これを補足する
ことにしよう。
T 『全米十代妊娠予防運動』の報告書(2005年9月17日)から
この『運動』の目的は1996年から2005年にかけて、十代の若者の妊娠を3分の1に減らす
ことにある。 今回の報告書は実は2002年度実施の結果で次ぎの通りである。
1. 15才〜19才の若者の半数以上がオーラルセックスをしている。 その内訳は、性交していな
い者は約1/4(少年24%、少女22%)である。このことは18才、19才に限ってみても差はない。
しかし性交経験者は88%に達している。 その内訳は、少年(15才〜17才)の経験者は85%,
(18才、19才)は90%であり、少女(15才〜17才)は80%、(18才、19才)は86%である。
従って十代全体としては、少年55%、少女54%の者がオーラルセックスをしていることとなる。
2. これを1995年と比較すると、性交未経験者は殆ど変化はないが、しかし性交経験者は1995
年には82%であったものが2002年には前述のように88%に増えている。
3. このようにオーラルセックスは今や普通のことになってきている。 また童貞、処女性を保持
するかわりの面もあろう。 しかしオーラルセックスが媒介する病気があるので、今後その対策
が望まれる。
オーラルセックスの理由
理由 | 少年% | 少女% |
道徳的、宗教的な理由のため | 18 | 20 |
妊娠を避けるため | 38 | 31 |
性交による病気を避けるため | 28 | 26 |
良い相手に遭遇しないため | 26 | 31 |
良い相手はいるが適当な時間がないため | 39 | 37 |
その他 | 17 | 20 |
註 調査方法
2002年に15才から42才の者について面接によって実施され、12,571名の回答を得た
結果である。実施組織はNational Survey of Family Grouthである。 そのうち十代
についてはオーラルセックスに焦点が当てられた。
なお『全米十代妊娠予防運動』: The National Campaign to Prevent Teen
Pregnancy
とは前述したように十代の妊娠を減らす目的で1996年に設置された私的、非営利、非政
党的な機構である。
U 関連記事: Washington Post(9/16/2005)号から
この記事はNational Center for Health Statisticsを基にしているが、その原典データ-は
前述Tのものと同じである。 それから補足しておこう。
○ 約2分の1の十代がオーラルセックスをしている。 男女とも同じ率である。 18才、19才
については約70%であり、性交経験者の率はもっと高くなる。
○ 女子高校生は恋愛ではなく、一時的な性行為というような意識である。 男子高校生と
その率は殆ど差がない。 「少年がハンターで少女が被害者」といった既成概念は通用し
なくなってきている。
○ とくに中流、上流所得層にあってはオーラルセックスは以前、考えられたようなものではな
く、友達関係、社会の普通の行為であり、子供たちの生活の一部になっている。
○ このように節制を強調する性教育者は驚くべき状態になってきているとし、フェラチオ、
クリニングスのような代わりの性的行為に導く必要を述べているが、オーラルセックスを支
持する人たちは性交を控える利点を強調している。
○ 確かに今の十代は性交による妊娠、病気感染の危険性を認識しているが、オーラルセック
スといえども精神的な影響、淋病、梅毒、乳頭腫、子宮頚管との関係もあり、危険なことを自
覚させる必要があろう。無警戒であるが故に今後の対策が問題である。
V その他
○ Austin American Statemanも、その2005年9月15日号で同じ問題を報じているが、そこで
はオーラルセックスの危険の面を中心に据えている。
○ ゲイ・レスビアン統計研究センターもこの件に触れているが、そこではTで述べたように「オー
ラルセックスは性交よりずっと手軽なものになり、ある種の友達関係になっている」、「子供たち
の生活の一部」とコメントしている。
コメント
ご覧のとおりの実態である。 わが国の場合についてはわからないが、いずれ道徳、妊娠予防
と関連する病気対策との両面から論議されることになろう。
[参考] 週刊誌[週刊新潮]の平成19年11月15号は全米名門高校[セックス白書]を特集されたが、
そのなかで元高校長である教育評論家の杉田荘治氏のコメントを載せている。 本文に記し
た報告書のこと、その理由、上流所得層にあってはオーラルセックスは以前、考えられたよ
うなものではなく、友達関係、社会の普通の行為であり、子供たちの生活の一部になっている、
などである。
別件 アメリカにおける進化論論争の最近の動き
最近、ペンシルバニア州で地教委の進化論に疑問を投げかける方針に反対して、11名の進化論
支持派の親が裁判所に訴え出た。 その近況について第147編に追記したので、それを参照して
ください。 そのコメントの一部を下記しておこう。
今やインテリジェント・デザイン:知的計画者が争点なのである。 たんなる天地創造や自然的
な経過によるだけではなく、宇宙や多様な生命は「計画する者: designer」によってつくられ、
発展させられているということが論点になっているのである。 しかも裁判では、そのことも進化
論とともに生徒に教える必要があるかどうかが争点である。
わが国では、創造説(論)をただ非科学的とか馬鹿げているなどの批判が殆どであるが、また
それは容易なことであるが、しかしこの視点に立って、より深い研究と批判が進められることを
期待したい。
2005. 10. 1記