152. アメリカのSATT・SATUテストとわが国の『センター試験』
−『国語』を比較してー
はじめに
アメリカ(U.S.A)では大學入試のさいにはSAT T・Uを事前に受けてくることが必須要件である。
従って、わが国の『センター試験』に相当するが、両者には多少の相違も見られる。 そこでその比較に
重点を置きながら『国語』関係を取り上げてみることにする。 なおこの研究には片山周子氏(イオン
ド大學)の協力を得た。
日米の対照表
アメリカ(U.S.A) | わが国 |
SATTテストとは 上述のようにアメリカ大學委員会が実施するテストであるが 正式にはStanford Assessment Test Tのことである。 正確にはSAT Reasoning Testと呼ばれる。 すなわち、 Verbal(ことばの、語の)という分野と数学についての基 礎的な表現力、理解力、論理的思考力を問うテストである。 Verbalについては英語、アメリカにあっては国語と訳され ているが、内容的には人文科学、社会学、自然科学、人間 関係学なども含めて広範で基礎的なものである。 テスト時間は英語、数学ともに75分。 なお、資料1, を参照してください。 |
大学入試センター試験を利用する大学は、大学 入試センター試験の出題教科・科目の中から、入 学志願者に解答させる教科・科目及びその利用 方法を定めている。 入学志願者は、各大学の学生募集要項等により、 出題教科・科目を確認の上、大学入試センター試 験を受験することになる。 多肢選択による客観式テスト方式 表面的な暗記知識だけを問うのではなく、論理的 な思考力や判断力なども評価される。 |
SATUテストとは 正しくはSubject Testといわれる。 専門教科の能力を問うテストで各大学はその一つ以上 を受けてくることを義務づけている。 ○ 各教科 60分 配点 多少差あり なお資料2, 3を参照してください。 |
国語 (200点) 80分 「国語」 『国語・国語 』 『国語・国語』は、「国語」と 「国語」を総合した出題範囲とする。 「国語」と『国語・国語 』は、 いずれも近代以降の文章、古典(古文、 漢文)を出題する。 上記の2科目のうちから1科目を選択し、解答 する。 平成17年度、国語は1月16日(日) その他、資料4, 5を参照してください。 |
【参考】Harvard大學へ毎年約10名、高校の成績証明書なしにSATT、SATUテストの高得点
のほかエッセイ、面接、推薦書によって入学している。その他多くの大學がこれに準じて
いる。従って年齢制限もその点、緩やかであることが、わが国と異なる。
資料1 SATT 質問形式(原文)
次はSAT Tの質問形式の原文である。 このように質問の内容、質問の数、その時間など
が規定されている。 例えば内容として語彙に関する質問数は4〜7問であり、社会科に関す
る質問は8〜12問、自然科学に関するものは8〜12問その他、文字総合力、論理的な思考力、
人文の分野などである。 30分が2回、後15分
Content | Number of Questions | Time |
---|---|---|
Vocabulary in Context | 4-7 | Two 30-minute sections plus one 15-minute section |
Literal Comprehension | 4-5 | |
Extended Reasoning | 28-32 | |
Other Verbal Questions | ||
Humanities | 8-12 | |
Social Sciences | 8-12 | |
Natural Sciences | 8-12 | |
Human Relationships | 8-12 | |
Total | 78 | 75 minutes |
資料2 SATUの『作文・書き取り』テスト エッセイのサンプル
Writing Sample Essays: リア王のストーリー
In William Shakespeare's King Lear, the theme of madness plays a major role in Lear's life. Lear's madness becomes his freedom from the rules around him. In the first scene, Lear gives up his land and therefore, power to his daughters, supposedly freeing himself from obligations in his old age. Yet Lear soon finds that his life and the people in his life are not as he once thought them to be. His daughters ...................... |
また、地球のグロバリゼーションについての論文を読ませる。 In today's globalizing and expanding society, technology is playing an increased role in connecting people from different nations. Information travels around the world quicker than ever before, via email and the internet……… また、自由についての誤解がある、との論文を読ませるなど、6トピックからの選択である。 |
Multiple-choice | Essay | |
---|---|---|
How many? | 60 questions | 1 essay |
How long? | 40 minutes | 20 minutes |
How it works | For each question, choose the best response from five choices offered.
There are three types of questions: Identifying sentence errors Improving sentences Improving paragraphs. |
You'll be asked to write an essay on an assigned topic. It doesn't require specialized knowledge in any particular academic discipline. |
Scoring | 2/3 of your overall score | 1/3 of your overall score |
資料3 SATUの文学の出題傾向
下記の原典からわかるように著者に関するものが最も多い。次いで世界文学、子供に関する
もの、ドラマ、詩、芸術・音楽などの形式を問うものも多い。
著者に関するものが圧倒的に多い。 Categories: Authors (11541) Spirituality,Humor,Horror,Young
Adult... Awards and Bestsellers (38) |
SATU の『文学』テスト サンプル は次の通りである。
例 詩を読ませる。
Against that time (if ever that time come)When I shall see thee frown on
my defects, |
資料4 平成18年度からのセンター試験 国語
出題科目は『国語』1科目とし、「国語総合」に「国語表現T」を加えた出題範囲となる。 |
(説 明) |
新指導要領では、6科目(「国語表現」、「国語表現」、「国語総合」、「現代文」、「古典」及び「古典講読」)が設 定されており、これらのうち、「国語表現」又は「国語総合」のいずれか一方を選択して必履修することとなってい る。 「国語表現」の内容は、「A話すこと・聞くこと」及び「B書くこと」の領域を中心として構成されていることから、 独立した科目として出題することは困難である。 したがって、「国語総合」を基本として、さらに「国語表現」で重視する「A話すこと・聞くこと」及び「B書くこと」の 領域の内容を加えて出題する。 |
資料5
わが国のセンター試験・国語関係の内容については、出典一覧のうち評論は、文化や哲学に関するもの
が最も多く、その他、文学、芸術、人生に関するものとなっている。 また小説については、家族や少
年に関するものが最も多く、その他、老い、死、恋愛、病気に関するものとなっている。 作者については
新旧多彩である。
1990年度から試験時間は80分、設問数は6問、マーク数は年度により6〜11、その他平均点は130点台
になる年度が多い。 その他例えば古文については、それにしっかり取り組んできた生徒にとっては、実
力がそのまま評価される問題であり、これまた評価できる。 漢文についても内容読解が中心で、こつこつ
積み重ねて学習している生徒にとっては良い問題で評価できる。 ただし時に設問の仕方で「適、不適」の
判断がし辛い難問も見られる。
あとがき
日米ともに理解力や論理的思考力を問う点は共通である。また多肢選択による客観テスト
になることは時間や受験者の数からみてやむをえないことである。しかし随筆やかなり長い
文を読ませて記述させようとする意図も見られる。 長い年月の経験から問題も妥当なもの
が多いように思われる。 ただ大きく異なる点はわが国では現役では高校3年次の一回だ
けであるが、アメリカでは卒業年次の前年から、しかも1年に数回受けていることである。
その際の点数は大學にもよるが一般的には高いほうを考慮される。
前編151の参考資料
アメリカ NCES資料 左図(右)のように高校では 2,000人以上いる学校では、 「学習に手助けを必要とする生徒」 が72%もいる。 しかし、400人以下 の小規模校では36%である。 前編151.『総合高校から小さな高 校へ再編成』の参考資料として付 記しておこう。 |
2004. 12. 13記