杉田荘治
はじめに
アメリカではホームスクールの生徒は約110万人いる。
このことについて連邦教育省統計センター:NCESが今年(2004年)7月に発表したが、先ず
これを概観し、その後ホームスクール法律協会が説明している諸事項を要約し、次いでその
生徒たちが大學入試を受けるさいに特に重要視されるSAT、SATUなどについて述べること
にしよう。
T 連邦教育省統計センター:NCES発表から 2004年7月
全米家庭教育調査プログラムと協力してホームスクール生徒について調査したが、1999年
の春には85万人であった生徒数が2003年春には109万人を超えるようになった。 これは
全米の生徒数の約2.2%に相当する。
調査方法
○ 対象生徒は5才〜17才 これは幼稚園児から12年生までの生徒に相当する。
○ 11,994名の親と面接して調査した。
○ 公立または私立の学校へ通学する時間が、1週で25時間以下の子供である。 ただし
一時的に病気で欠席した者は含まれていない。
調査結果
○ 1999年春には850,000名であったが、2003年春には1096,000名になった。 これは全
米生徒の2.2%であり、その率も1999年春には1.7%であったので高くなっている。
ホームスクールの生徒数
年次 | 1999年春 人数 | % | 2003年春 人数 |
% | |
ホームスクールだけの者 | 697,000 | 82 | 893,000 | 82 | |
通常の学校へ通う時間、1週25時間 以下の者 | 153,000 | 18 | 198,000 | 18 | |
内訳 (9時間以下) (9時間〜25時間) |
107,000 46,000 |
12.6 5.4 |
137,000 61,000 |
12.5 5,6 |
|
計 | 850,000 | 100 | 1096,000 | 100 |
ホームスクールを選んだ理由
公立学校の環境が悪いから 31% 宗教的・道徳的理由から 30% 学校の教科や指導が適さないから 16% 家庭的事情から 9% 子供の精神的・身体的理由から 7% その他特別な必要性から 7% 計 100%
補足
Boston.com News 2004年8月4日号が、このホームスクール生徒の件を報じている。
勿論その数や%などについては連邦教育省統計センター発表分と同じであるが、若干の
コメントも載せているので、それを中心にして要約しておこう。
○ 全米で約110万人 それは全米5才児〜17才生に相当する。
○ 実際には200万人いるのではないかといわれる。
○ 全く学校へ行っていない生徒が、その3/4を占めている。
○ 通常の学校ではテロリズムの心配、発砲事件、傷害事件などが起こるので、
そのような悪い環境を恐れている。
しかし問題点としては、
○ 多様な教科に対応できない。
○ 実験室などの施設・設備がない。
○ 他の子供や文化に接する機会に乏しいので、そのような筋肉を鍛えることに欠ける。
従って彼らが大人になったときのことも考えて当局は対策しなければならない。
U ホームスクール法律協会の説明 Home School Legal Defense Association
2003年10月27日
わが協会はホームスクールを法律的に防衛する目的で1983年に創られたが、それ以来、常
に各大学と協議している。
○ 1994年に16,000名のホームスクールの生徒の学力標準テストの結果を分析したが、リー
ディングでは79点、言語と数学では73点で、そのいずれも全米全体の生徒の平均点より
数点上まっていた。
○ 全米では実際の生徒は200万人とも考えられ、また増えつづけている。 生徒には学年
やクラスのランクも必要ではない。
また別の調査によっても、
○ ホームスクール出身の大学生は学力的にも情緒的にも、また社会的にも良くやっている。
○ 入試のさいは高校成績証明書はないが、それは克服できない問題ではない。
○ 親の子供の教育に関する関心が非常に高い。
大學入試方法 200以上の大學についての調査結果である。
○ Harvard大學には毎年、約10名入学している。 それにはSATT、SATUテストの得点の
ほかエッセイ、面接、推薦書によっているので、高校の成績証明書は必要ではない。
○ Arizona, Maryland, Virginia, Hawaii等の大學でも「親の評価」は必要だが、必ずしもGED:
高校卒業資格認定書も求めていない。その他「本人の経歴明細記録」によって高校の成績
証明などに替えている大學もある(Lewis and Clark大學)。
【註】ホームスクール生徒にとってはSATテストの得点が特に重要視されるので、次項で述べ
る。
SATT と SATU
このことについては第92編で一部述べたが、まずその関係個所を下記し、それに大學委員会
の説明も付記しながら概要を述べよう。
SATテストは大學委員会が実施するテストで、多くの大學の入試には、それを受けてくることを
必須要件にしている。SATUは専門科目であるが、SATTは広い意味での英語(Verbal)と
数学である。Verbalは批評的なリィーディングのことで総合的な文章理解力、論理的思考力
が問われる。 年7回実施
多くの高校生は3年生(4年制の) または4年生で受けている。 なお各大学はこれらのスコア
の他に、高校での記録、エッセイ、推薦書、面接、課外活動などの資料を併せて合否を決定し
ている。
付記
○ College Board Test, SATT 3時間のテスト 英語と数学で200点〜800点満点
前述のように多くの大學は受験のさいの要件としている。 数回受けることができる。
本人の最終回の得点をみる。しかし前回がそれより良かった場合は、その得点が参考
にされる。
○ SATU 1科目、一時間のテスト 配点多少差あり。 科目は次ぎの22科目。
多くの大學は1科目以上受けてくることを要件としている。
Writing Literature U.S.
History World
History Math
Level IC
Math
Level IIC Biology
E/M Chemistry Physics French
French
with Listening German German
with Listening Spanish
Spanish
with Listening Modern
Hebrew Italian Latin Japanese
with Listening Korean
with Listening Chinese
with Listening
English
Language Proficiency Test
コメント
ご覧のとおりアメリカでは、ホームスクールの生徒が約110万人いて、しかも少しづつ増えて
いる。 親がそれを選んだ理由としては公立学校の環境の悪さを第一にあげている。 した
がってこの面からみるとゼロ・トレランスの効果も今一つといえよう。 また彼らが大學を受
験するさいにはSATテストの得点がより重要視されるので、このテストについて比較的詳しく
述べたが参考になろう。
2004. 9. 5