12. 今後の日本と黒船


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杉田 荘治


    70 才になった今でも、不惑には、ほど遠く、日々の生活に一喜一憂している有様であるが、それ
   でも時には[我が国の将来]について考えることがある。
  1997年4月記

     追記 2001年に再び“黒船”
   今日( 2001年9月18日)現在、先週の火曜日にニューヨーク市等で起きたテロ攻撃に対して
  アメリカは、これを『戦争状態』として、見えない敵・ネットワークの組織に対して『新しい戦争』
  に突入しようとしている。 その敵は、国境らしいものもなく『ヤマタノオロチ』ともいえる複数の
  頭や尻尾を持った組織であるが、当面、アフガニスタンに対して、空爆、ミサイル攻撃、特殊部
  隊による奇襲、また地上軍の進撃などが、とりさたされている。
  この戦争は、まさしく、わが国にとって“黒船”といえよう。
   「現行憲法の枠内で、できるだけ協力する」という『総論』については、政府、議会、また世論
  でも大きな差はない。しかし、さて具体的に、どの程度、どのようにしてという『各論』となると、
  いろいろと分かれてくる。 資金的援助を限度にすへき、またイズラム社会に対する理解を深
  める策を講ずることを主にすべきなどの論から、積極的に関与すべきであるとする論まで、ま
  ちまちである。
   今のところ討論の域を脱しないように思われるが、特にアメリカ軍、多国籍軍、同盟軍に多く
  の死傷者が出たり、また作戦が長期化すれば、わが国に対する国際的な批判は厳しくなり、
  『死の商人』として非難されることになったり、それとともに国内でも国論が大きく二分される
  ことになろう。
   その機に及んで、なお「わが国およびわが国の周辺で、わが国の平和と安全を脅かす範囲に
  アフガニスタンやインド洋が含まれるのかどうか」などと『小田原評定』を続けていることはでき
  ず、具体的な行動をとらざるをえず、また時には現地指揮官が判断・実行しなければならない
  状況も起こってこよう。
   私は、その場合を含めて、政府、議会などが慎重に審議し、国民に計り決定されることを望み
  たい。 速やかに、憲法9条のみならず、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永
  遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」とする憲法の前文
  の精神と解釈を国民に計られることが必要である。 現行ガイドラインの変更、また新立法に
  ついても同様である。 それらについて、国民の十分な理解が得られるかどうかは、わからない
  しかしその気になれば、政府や議会には手段はあると考える。


 2001年9月18日記           ポーツマス条約