杉田荘治
はじめに
最近(2003. 11月)、アメリカ連邦教育センターの生徒数に関するデーターをBoston
Globe(11/12/2003)
が紹介しているが、それによれば“今後も生徒数は少し増える”とのことである。 その概要を述べて、
その後、退役黒人軍人の教職への第二の人生の例について記したい。
T 今後10年間に公私立の生徒は約5%増える
1980年代の終わりから2001年にかけて、アメリカの公私立の生徒は19%増えて合計で5,400万人に
なったが、その後2013年にかけては、その上昇率は5%で、総数は5,640万人になろう。
また公立学校の生徒については地域によって増減などが違ってくる。 北東部では1.8%減少す
るが、西部では13.2%増加する。ことにAlaska, California, Hawai, New
Mixicoの各州の増加
が著しい。 中部はほとんど変らないし南部は微増である。
その理由は移民の増加や住民が良い仕事や余り混雑しないところ、安い住居、暖かい気候などを求
めて異動することによるが、特にヒスバニック、アジア系、アフリカ系が増えるためである。 ことにヒス
パニックは非常に増加して上昇率は60%になり、今790万人の生徒が1,200万人以上に2013年にはなっ
ているであろう。
U その他のデーター
○ 大学生も増えて、2013年までに19%上昇し、その数は1,820万人になろう。
○ 高校卒は2013年までに11%上昇するであろう。 そした毎年の卒業生は320万人と予想される。
○ 教員も5%上昇し、総数は360万人になるであろう。 なお1988年から2001年までは27%も上昇
していた。
○ 生徒一人当たりの費用は2013年には9,400ドルと計算される。 なお2001年には7,500ドルで
あった。
V 人種の多様性の変化
前に述べたように黒人、ヒスパニック、アジア系などの人種が増えて全米最大の教員組合て゜ある
NEAは20年後には、公立学校では彼らが主流占めるようになると予想している。しかし教員がそれ
に対応できないことを懸念している。 というのは黒人教員は30年前には8%であったが、今は6%に減っ
ていることからも予想されるからである。(この項: The Times shrereporttimes.
8/31/2003)
W 参考 黒人教員の不足を解消する一つの例
退役軍人を教職に ......... Troops to Teachers Plan
このプランは退役軍人が第二の人生として教員になることを選んだとき、それを援助しようとする
計画で基地はフロリダ州のペンサコーラというところにある。教員免許取得のための授業料を5,000ドル
補助しさらに合格して都市の中心部の学校で働くことに同意した者には一時金として1万ドル、支給され
る。
1994年に始められてから今までに5,500名の退役軍人を教職に就かせてきたが、Bush政権の力
強い支援を受けている。 約80%は男性、また43%はマイノリティである、担当官が説明している。
次ぎに紹介するBaileyさんも、その一人で、1991年の“湾岸戦争”に従軍した経験のある軍曹であるが、
この計画によって教員になり今、デトロイト市のS小学校で勤務いている唯一の黒人教員である。「私は
毎朝、21人の子供に接し、教科は理科、数学、国語を教えているが、もっと子供の家庭を理解したいと
努力している」。 また「公立学校では10名のうち4名はマイノリティの生徒で占められているが、教員は
10名のうち9名は白人で、しかも10名のうち8名は女性である」とも語り、それだけに黒人男性教員として
一層努めなければならないとしている。
彼は昨年、「問題児」の集まりである“男のグループ”を発足させた。 そのグループの子供たちに「二つ
の仕事を抱えて忙しすぎるシングル母親の気持ちも考えないで、親か゜かまってくれないことを口実に
するな!」と教えこんでいる。 このような黒人教員がもっと増えることを期待したい。
なお『退役軍人を教職に』計画の他に、South Carolina州のCleman大学でも"Call
Me MISTER"と
いうプロジェクトを立ち上げ、200名の黒人学生が、この州の小学校で採用されるように仕事を始
めた。【この項 前述The Times shrereporttimes 】
コメント
ご覧のとおりアメリカでは、緩やかではあるが今後も生徒数は増える。 また人種の多様性が一段
と進み殊にメキシコ系アメリカ人のヒスパニックの増加が著しい。しかし教員の多様性がこれに対応
していないことが問題で、黒人教員の不足対策も課題であろう。
2003. 11. 29記