杉田 荘治
はじめに
カナダでも『国民的肥満』が大きな問題になってきている。 これをAlberta州の学校で体育の授業
時間を増やす案が検討されている例を取り上げて見てみることにしよう。資料やデータ‐はそれぞれ
後述のとおりであ。
T 現行
現在、Alberta州の公立学校では州法で「体育と健康の授業は総時間の10%を充てること」とされてい
るが、それは1週間で150分を意味する。 また7年生から9年生までは年間、最低75時間を充てるこ
とを意味する。 しかし高校では10年生は必修であるが11年生と12年生は選択とされる。
U 改正案
州のLyle Oberg学習長官は、1年生から12年生まで毎日、30分以上その「体育と健康」の授業
に充てることを義務にするよう計画している。
V 賛否
多くの人たちは、この計画に賛成であり、子供たちの習慣になることを賞賛しているが批判や問題点
も多く残されている。例えば州の教員組合や学校関係者は、
○ どうして毎日、学校でその30分を確保するのか。 また他のどの科目をカットするのか。
○ 必要な予算は確保されるのか。 またスタッフは確保されるのか。
○ Alberta州にとどまらず、いずれカナダ全土の問題になろうが、その準備はよいのか。現にカナダ
教委協会もAlberta州の動きに注目している。
○ 広く自動販売機やキァフテリァでのジャンクフードなどの食物を変更させることが必要である。
今のハンバーガーやフレンチフライ以上の物を作ること。
【資料】Edmonton Jpurnal(Canada) 8/21/2003号
W 統計
○ 1998年現在 カナダ人の体重過重 ....... 47.9% 【統計カナダ:
Statistics Canada】
○ カナダの体重過重の都市 ワースト10 【CTT and Globe
and Mail 6/21/2001号】
1. St. Catharines 57.3% 2. Ontario city 56.5% 3.
Saint John(N.B.) 56.4%
4. Windsor (Ont.) 52.8% 【註】原文のミスプリントと思われるが。
5. London(Ont.) 53.6% 6. Charlottetown 52.7% 7. Saskatoon
51.9% 8. Winniperg 51.8%
9. Fredericton 51.8% 10. St.John(N.S.) 51.4% 【註】体重過重は身長と体重との比から計算。
○ 州別では、Edward Island が最悪で20才から64才の大人の60%が過重である。
その後、Newfoundland 58.9%、 New Brunswick 58.3%, Saskatchewan
57.9% と続く。
以上のように田舎地方が都市部より過重が多い。 また1981年と比較すると48%上昇している。
○ また1997年の健康に関する予算は全予算額の2.4%を占め、その主なるものは高血圧、真性糖尿病、
冠状動脈である。
コメント
ご覧のとおりであるが、30分程度の時間の捻出であろうと軽く考え勝ちであるが、学校関係者
には、それがいかに大変であるかは知るところである。 毎日、担任などが適当にやるのでは、
いずれ飽きられ形式化して効果はない。そのためにカットされた科目からの不満も出よう。 第一、
担任そのものが大変である。 とすると特別にスタッフを雇い、また施設・設備も整える必要があ
ろう。
ファーストフードに代表される高脂肪・高カロリーの生活習慣を変える必要性については各国とも
異論はないが、このように積極的に学校のカリキュラムに踏み込む動きに注目したい。
2003. 11. 15記