謎式ガデス
〜 ガデスオリジナルストーリー・ストレンジミッション(2)〜


 総本山に到着したガデスは、影高野本堂へと案内された。

 「・・・・」
 「しばらくお待ち下され」
 「(一見人が少ないようだが・・・警備が手薄ということではなさそうだ)」


 しばらくして、尼僧とおぼしき者達数名に囲まれて巫女風の少女が姿を現す。

 「・・・遠路はるばる御苦労でした。わたくしは栞と申します」
 「大僧正はどうしたのだ・・・?」
 「大僧正様・・・父者はここのところごかげんが御優れでいらっしゃらないので・・・」
 「・・・・」
 「本題に入ってもらおうか・・・」
 「実は・・・そなたにに抹殺して頂きたいものがおりまする」
 「・・・・」
 「・・・念の為にあらかじめ言っておきますが・・・抹殺していただきたいと言っても・・・相手は『人』ではございません」
 「なん・・・だと?」
 「・・・あなた様に抹殺していただきたいというのは・・・“もりがん”という『悪魔』でございまする」
 「俺は・・・エクソシストでは、ないぞ・・・?」

 「これを」

 「おお、玄真か・・・」
 「・・・・」

 玄真と呼ばれた男が持ってきたのは、和風の棺桶に入った男の死体だった。
 その死体は、まるで死後何百年も経ったかのように干からびきっている。

 「・・・・」
 気持ち悪そうな表情をかいま見せる栞と尼僧達。

 「これは・・・五日前に原因不明の変死を遂げた者の亡骸にございまする・・・」
 「・・・五日前・・・だと?」
 「左様。・・・しかもこれは発見当初からこのようであったということでござる」
 「・・・・」
 「・・・この生きながらにして魂を貪り尽くされたような死に様・・・この国の『魔』の仕業とは到底考えられません。ここのところ『魔』も我らの世界を蹂躙する気は既にない、とICPOの方にも言われていたのですが・・・」
 「仮にそれが本当だとしても・・・俺の聞いた話では日本のゴーストスイーパー達にはたぐいまれない能力を持った連中が存在する、と言うことなのだが・・・。何故そいつらに依頼しないのだ?」
 「ごうすとすうぃいぱあの方々は・・・皆別の仕事で現在手が放せない、とのことでござりました。・・・『魔』側の一部に不穏な動きがあると・・・」
 「・・・・」
 「もちろん、我々も全力をもって貴方に協力いたします。どうか・・・」
 「・・・儂らとて、何もしなかったわけではござらぬ。じゃが・・・異国の“さきゅばす”なぞに影高野が翻弄されたとあっては・・・我らの歴史に汚名を残すことになりまする・・・」

 「・・・・」
 ガデスはしばらく無言であったが、やがて、おもむろに口を開いた。

 「・・・もうすでにこうして来ている。もっと詳しい話を聞かせてもらおうか」
 「おお!引き受けて下さるというのですな!」


 「・・・最初にこのような変死体が発見されたのが・・・およそ一ヶ月前のことでございました。」
 「・・・・」
 「あいにくその当時からごおすとすうぃぱあの面々は別の仕事で日本を離れてござって・・・それで、まずはこの国にいるあいしいぴぃおぉおかると課の日本駐在員達が・・・調査に当たったのでござりますれど・・・」
 「・・・・」
 「・・・ある日、一人の調査員が惨殺死体となって発見されたのですじゃ」
 「・・・・」

 終始、無言の姿勢を貫くガデス。

 「“MORRIGAN”・・・おそらくその調査員が死に際に遺したと思われる血の文字が・・・現場に残っていたそうですじゃ」

 「モリガン・・・ケルト神話の女神の名か・・・」

 「そのようですな。・・・じゃが、それについてよおろっぱのGS協会に日本の駐在員が問い合わせてみた結果・・・怖ろしいことが分かりもうしたのでござりまする」
 「・・・・」
 「そいつは・・・ヨーロッパの数多の一流GS達をことごとく葬り去ってきた・・・むこうのゴーストスイーパーたちに『夜の女王』と恐れられてきた欧州GS協会ブラックリスト所載の悪魔だったというのです。」
 「・・・・」
 「・・・そこで、我ら影高野が動くことと相成った、というわけでござるが・・・」
 「なにせ手がかりらしい手がかりといえばその名と・・・これまでの事件がすべて東京の繁華街一帯で起きているといった以外・・・。当然、我らにとってもあいしぃぴぃおぉにとっても・・・ほとんど暗中模索の状態でござりまする」
 「聞くが・・・そいつが今もなおこの日本にいる、という保証はあるのか・・・?」
 「・・・それは・・・ですが、日本の主要GSがいない今の状態では・・・少なくともこの国を守れるのは私達とICPOオカルト課の皆様しかいません。ですが、相手が相手なだけにかなり不安がぬぐえないのが現状です」
 「もうすでに我らの手の者達が多勢で東京一帯の一斉調査にあたっておるわけですが・・・依然、手がかりが掴めぬと・・・」

   「状況はよく分かった。で、俺は何をすればいいのだ・・・?」

 「貴方にしていただきたいことは・・・現在東京一帯を調査している我々の手の者たちに協力していただくことです」
 「・・・・」
 「・・・期限は日本の主要GS達が帰国し仕事を再開できるようになるまでの間・・・そして、もしそれまでに何も起こらなかった場合・・・もしくは具体的な手がかりが全く掴めなかったと判断された場合・・・貴方にはもちろんそれ相応のキャンセル料を私達名義で改めてお支払いいたします。」

 「承知した」

 ガデスの返事に安堵の表情を見せる栞と僧侶達一同。

 「では・・・今日はここで疲れを癒して下さい。明日、改めて具体的な仕事内容を説明します」
 「・・・・」


 しかし、彼らは気づいていなかった。

 影高野への道程に、・・・数匹の蝙蝠が飛び交っているのを・・・




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