わらしべ長者
- (語り部)
- 昔々、あるところに真面目に働いてはいるものの、なかなかうだつの上がらない好青年が居ました。青年には野望がありました。しかし、今のままでは普通の人生で終わってしまい、野望を果たすことが出来ぬと悩んでいました。
- (青年)
- ここは一つ、斎戒沐浴し、天地神妙に願を立ててみよう。運気を変えることが出来るかもしれない。
-
- 彼は九天玄女の占術を行って吉日を選び、その日から毎日、観音堂へお参りすることにしました。
-
- 「血は命なりッ!」
- (生贄)
- いやぁぁああっ!!!
-
- 彼はくる日もくる日も、毎日欠かさず生贄を捧げました。そして満願成就の百日目。
-
- むっ…奇妙に眠い……… 少し横になろうか………
- (観音様)
- 貴方が落としたのは、この銀の斧ですか?それとも金の斧ですか?
- (従者)
- あんさん、その芸長いですな。
-
- おお、これは二丁戦斧の黒旋風観音様。
その征くところ屍の山を築き、血の雨を降らせるという有難い観音様ではありあませんか。
-
- そんな殺生な。
-
- あなたは正直な方ですね☆ そんなあなたに観音様から人生のワンポイントアドバイス♪
-
- ひえええええっ。
-
- このお堂から出て、最初に手に触れたものを持って旅に出なさい。そして、機会があればそれを交換していきなさい。
最終的にあなたの望むものが得られるでしょう。
-
- 空気は?
-
- 却下の方向で。 ではバイバイブー。
-
- ………うッ……… 妙な夢だった。いや奇妙というのは余りに現実的ッ。特にあの、ぼこぼこしたカボチャの様な顔は忘れられないッ。
-
- ドドドドドド………と、まるで荒木飛呂彦の漫画のような擬態語をバックに、青年は呟きました。
ふと、指先に何かが触れているのに気が付きました。
-
- むぅ、コレはどこぞの誰かがお百度参りの際に使った藁人形の藁だろう。何の役にも立ちそうに無いが、折角の夢のお告げ。とりあえず、もっていくか。
-
- 青年は、道すがら飛んでいたアブを藁にくくりつけ、その行く先についていきました。
- (アブ)
- あれ、とんでれら?
-
- トコトコと歩いていくと、身分の高そうな方の乗っていらっしゃる、牛車にすれ違いました。
- (牛車の牛)
- 下にぃ〜 下にぃ〜
- (お姫様)
- あ、ねぇねぇ、なにそれ、なにそれ?
-
- 畏まっていた青年に、牛車の姫様がお声を掛けました。
-
- これですか? これはこのように使うものです。
-
- うぃーん、うぃーん、ぶぅぅぅぅーんっ。
-
- ええっ? ああっ? あんっ、そんなところぉ、そんなにされちゃうとぉ…… ひやぁんっ!?
- (護衛の人)
- こっ、こらぁっ!! うちの姫様に何をしておるか!
-
- まぁ、まぁ、よいではありませんか、よいではありませんか。
-
- こらっ、よせっ…………あんあん、ほんほん。あんあん、ほんほん。
-
- 青年は持ち前の手の速さで、姫と護衛を篭絡しました。
そして、姫の玩具のお礼にと、ミカンを三つ下賜されました。
-
- むぅ…元手がタダだし、こちらも楽しめたから良いものの、少々さびしいな。次は少し考えようかの。
-
- しばらく行くと、車一杯に反物を乗せた商人に出会いました。彼は水が無くて死にそうでした。
- (反物屋)
- みっ、水を……水をください………
-
- そうか、丁度良い。ここにミカンが三つある。その反物全部と交換というのはどうだ?
-
- そっ、そんな。足元を見やがって!
-
- それなら仕方ない。
-
- 男はミカンを一つ、地に捨てやると、足で踏み潰しました。
-
- うへーっ!? なっ、なにを?
-
- ここにミカンが二つある。その反物全部と交換というのはどうだ?
-
- そっ、そんなぁ! この布は全て極一流。 つめの先ほどの大きさでもミカン畑が買えますよ!
-
- それなら仕方ない。
-
- 男はミカンを一つ、地に捨てやると、足で踏み潰しました。
-
- うほぉーっ!?
-
- ここにミカンが一つある。その反物全部と交換というのはどうだ?
-
- かっ、勘弁してくださいッ! 赦してくださいっ!!
-
- 要らぬのか? それなら仕方ない。
-
- 待ったぁーッ! 交換します!! そのミカンと反物を交換しますぅっ!!
-
- 反物屋は泣く泣く、ミカンと反物を交換しました。そしてもう、二度と商売はしまいと心に決めました。
-
- さてと、首尾よく行ったが、我が野望に至るにはまだまだ遠いな。
-
- 男は暫く行きますと、合戦場に着きました。片方の陣を片方が攻めあぐねているようでした。
-
- これはこれは、実に見事な太乙混天像の陣。実戦で使っているのには初めてお目にかかった。
- (将軍様)
- 知っているのか、雷電!?
-
- や、私は雷電とは申しませんが、畏れながら申し上げます。
この陣形は陽の象を集めたもの。布陣自体が術的なもので、相生相剋の理を用いなければ破れません。
敵陣をご覧ください。黒蒼白緋金銀黄の色は水木金土火日月土の7つの星。さらに四方の星と合わせて十一曜を成しています。
漠然と攻め込めば、変化の渦に巻き込まれ、抜け出ることが出来ません。
しかし、十一の星に勝つ色の旗を掲げて攻め入れば、敵の動きを封じ、おのずと勝利を得ることが出来ます。
-
- なるほど。しかし、旗が無い。
-
- 私、丁度、反物を扱っております。もしご入用ならばお申し出くださいませ。
-
- よし、そちの策を取り入れてみよう。ものども、準備を整えよ!
-
- 果たして、青年の言うとおり、旗による色彩呪法を用いたところ、敵陣は動き様がなく、自滅していきます。
将軍は今までの苦戦がウソのように、首尾よく勝利を得ることが出来ました。
-
- 今回の勝利、そちのおかげじゃ。 褒美として、この千里を往く馬を取らそう。
- (馬)
- ウマーッ
-
- 青年は戦場を後にしました。この軍隊を乗っ取っても、まだ野望には遠いと判断したからです。
暫く行くと、未開のジャングルに着きました。
- (森の神)
- むぅーっ。ご馳走、ゲットだぜっ!
-
- ふぎゃーっ!?
-
- おおっと、しまった! 神性の生き物が潜んでいたのか。
-
- なんだ、我への貢物ではなかったのか。まぁよい。今の馬の霊性、非常に美味かったぞ。
礼と言っては何だが、汝、我が司祭として、そこな帝国の主にしてやろう。
-
- それはありがたきお言葉。 恐縮至極にございます。
-
- こうして男は帝国の主になりました。帝国民は司祭に対して絶対的な忠誠を誓っていました。彼は男は戦闘用サイボーグに、女は生殖マシーンに改造しました。そして20年じっくりと準備をし、世界に宣戦布告を行いました。各国は応戦しましたが、彼は準備期間の間に、目星をつけた少年少女を一時的に誘拐しては爆薬を装着していたのです。各国の権力中枢はもちろん、何気ない場所で、何気ない人々が爆発しました。容赦なき、凶悪なるテロ攻撃に、世界中の人々が恐怖に打ち震えました。
-
- 我が軍門に下れば、命だけは助けてやろう。
-
- 男は世界中に発布しました。爆薬は非常に手の込んだ方法を用いていたので、普通の医学では判りませんし、一人一人検査するする時間も費用もありません。文明国ならともかく、発展途上国は次々に降伏しました。彼は捕虜にした人間も全て改造しました。帝国は勢い付く一方です。こうして、全世界が彼の手中に落ちるのに、1年もかかりませんでした。
-
- 漸く、我が野望の準備は整った。全軍、進めぃっ!
-
- 実は彼は、宇宙戦争で故郷を無くした某宇宙帝国の王子でした。彼は虎視眈々と復讐の機会をうかがっていたのです。彼は星全体を要塞化し、無限ともいえる兵力を持って敵国に挑みました。彼が率いるWARASIBE部隊の活躍は、全宇宙に響き渡ることでしょう。そして、いつの日か宇宙に平和が戻ってくることでしょう。
めでたしめでたし。
-
- 教訓、最後の方、文字多すぎ。
小ネタ衆の時間へ
破壊の大帝ぐれねーどへ