ろどもん3外伝・外伝 狂乱の宴




   注意! これは、実際に起った事件に作者の妄想をもって
       過剰に脚色したものです。登場人物は実在します
       が、その人格、発言等は7割がた創作ですので、
       本人に出会ったからといって問いただしたりしな
       いでください。






 寒空の下。黒マントと青マントの人影が、海をボートで渡って行く。黒マン トの男の名はラプラス、青マントの名はリーベルといった。二人は主従関係に あり、共に召喚師である。その証拠に、ボートの上空には無数のピッスファル コンとビヤーキーが舞っていた。

「ラプラスさま、見えてきましたよ。小動物ランドです!」

「ふう、やっとついたか。もうすぐ凍死するところだったわい」

 ちなみに、二人がいるのは真冬の、しかも世界の果て近くの海。寒さは極ま る。流氷が流れ、雪がふっているような天候だ。キィキィとオールを動かす音 だけが響くなか、ボートはやたらきらびやかな城についた。

「で、仕掛けのほうは万全なんですか、ラプラス様?」

「無論じゃ。伊達によなべして細工したわけではないわい」

「なら、帰ってこなきゃいいのに……」

「なにかゆうたか?」

「いえいえ、なんでも」

 ボートは城門を潜り抜け、桟橋に横付けされた。

「じゃあ、私は帰りますから。くれぐれも、恨みをかわないようにお願いしま すよ」

「わかっとるわい」

 ラプラスは小さな旅行鞄一つを下げて、城内部への入り口に向かった。 城の 中はホールのような感じで、真ん中のほうで数人が話し込んでいるようだ。

「おこんにちは……」

「あ、ラプラスさんいらっしゃい♪」

 答えたのは、ここの城主である小動物さんである。

「ひさしぶりですじゃ。ところで、あすこで覗いとるのはどなたじゃな?」

 ホールの隅のほう、柱の陰からこちらをうかがっている人影……のようなも のがある。ちょっと手足の長さが違ったり、淀みが絡み付いているあたりが普 通の人間ではないことをしめしていた。まあ、人間と動物、ロボット、怪物、 その他諸々の合計のどちらが多いか判らない召喚師業界のことだから、それく らいで怯えたりすることは(普通)ないのだけれど。

「気にするにゃん」

 ここの常連の一人である(すくなくとも私と顔を会わせることは多い)小紀 ねこさんが言った。

「ふむ、そうじゃの」

 ラプラスの頭の中は、今回の「計画」のことで一杯で、それくらいしか言え なかった。城に着いたときはそれほどでもなかったのだが、「犠牲者」たちと 顔を会わせると興奮してくるものなのだ。

「ところでみなさん……」ラプラスは言った。いくら不意うちが好ましい計画 とはいえ、なんの前振りもなしにいきなり決行するのは気が引けるし、面白く ない。そうとは分からない台詞の後いきなりやれば、驚きも増すというものだ ろう。「鍋などはいかがですかな?」

「鍋。ですか?」

 小動物さんがすこし青ざめる。そういえば、以前今回の「計画」と同じめに あったと言っておったな、とラプラスは思った。

「そう、鍋ですじゃ。とても美味しいやつでの。具も、問題無さそうじゃし」

「いいですね。で、どこにあるんです?」

 att小動物さん(でかでかと「小動物」と描かれたたすきをしている。追 っかけかなにかだろうか?)がいった。その言葉をまっていた、とばかりにラ プラスはにやりと笑い、そして言った。

「ここにあるんじゃ」

「ここに?一体どこに」

 アルテミスさんが言った。ラプラスは、ちょっと床に触れてみて仕掛けが壊 れていないのを確認して、懐からリモコンを取り出し、言った。さらに、呼び 出したビヤーキーに自分を持ち上げさせる。

「この床の下にじゃよ!」

 その言葉と同時に、床が陥没した。

「きゃあっ!?」「うわっ」「何これ」「冗談だろ」

 幾つかの悲鳴(?)があがり、そこにいたラプラスを除く全員が落下した… …おっと、とっさに天井裏に駆け上がった小紀ねこさんと、壁に張り付いて難 を逃れたshadowさん(壁際にいたひと)も無事だったか。

「さてさて続いては……」

 ラプラスがリモコンを操作すると、城の壁が開き、どばどばと大量の水と生 きたプコロエール、アゾキ・コニア等雑多なモンスターが降ってきた。それに つづいて、陥没した下にあった鉄板が熱を放つ。

「もしかして、これって!?」

「やぁぁぁぁめぇぇぇてぇぇぇ!」

「アルテミスさん、あなたは私が残さず食べてあげるからね」

 大鍋の底にいる面々は何が起ったのか気付いたようだ。またもや悲鳴だかな んだかわからない声がホールに響く。ラプラスは天井の梁の上に陣取り、リモ コンを操作する。それに応じて、天井が下に降下し、大鍋に蓋をした。聞こえ ていた悲鳴も、そこで途切れた。

 ………30分後。ゆっくりと天井が元の位置に戻った。美味しそうな匂いが してくる。

「そろそろ食べ頃じゃの」

「食べるにゃ」

 天井裏の二人は、各々飛行系のモンスターに箸を握らせて「具」の回収に向 かわせた。

 さて、こちらはラプラスの放ったビヤーキーである。彼(?)は、とりあえ ず召喚師が沈んでいるであろう辺りに向かって湯気の中を飛び、ようやくそれ らしき場所にまでたどり着いた。そこで彼が見たものは。

「うわーん、アルテミスさぁ〜〜ん!」

 泣きながらアルテミスさんを千切っては口に運びを繰り返している小動物さ んの姿だった。 ─見なかったことにしよう─ 彼はそう考え、プコロエール が煮えている場所を求めて飛び去った。

 それから数刻。天井裏では、小紀ねこさんとラプラスが、引き上げられてき た具を貪っていた。

「おいしいにゃ。これは小動物にゃんかな?」

「むう、いかんな。やはりアゾキ・コニアは塩ゆでにしてからでないとアクが 抜けん」

 こんなことをしたら、食人主義者の殺人者になってしまうのではないか、と 思っているあなた。ろどもん3をやりこんでいないのでは?この世界の召喚師 は、数万tはあろうかというアウムドラに踏まれたり、ダゴンに張り飛ばされ たり、バイア系を即死させる炎を浴びても生き返るのだから、喰われたくらい では絶対に死にはしないのである。

「ふむ、具も少なくなってきたようじゃし、おじやにでもするか」

「にゃ!みーもおじやを所望するにゃ」

 そのころ。少し離れた聖地ヴィヴォマ神殿地下深く。リーベルが一人、小動 物ランドの狂乱を映す水晶玉を覗き込んでいた。安物のカップ麺をすすりなが ら、ぽつりとつぶやく。

「……僕も混ぜてもらえばよかった」

 北風吹きすさぶLM世界。寒さは増す。世間は暴走しヒートアップする。そ んな一例が、まさにここにあった。世界の南の果て。新たなる国が生まれ、潰 え行く地において、暴走野郎の毒牙にかかった哀れな小動物ランドに、合掌。

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破壊の大帝ぐれねーどへ