ロードオブモンスターIIIにおける失敗




 この文章は主に私自身の経験と考察を元にして書かれている。 また、参考にした文献なども挙げて無い。本人は論文調で書いているつもりであるが かなり主観的であり、そういう意味ではエッセイに近いものである。

 文中、インターネットとWWWを別にしているので戸惑われる方も多いと思われるが WWWとはインターネットで出来る事の氷山の一角である。 喩えて言うならば“電波”と一言で言った場合テレビやラジオ、携帯電話なども電波を利用しているのと同じである。 この場合、電波がインターネットで、WWWはテレビ電波、ブラウザがである。

 インターネットと言う言葉のみが一人歩きし、専門家ですら全てを把握しているわけではない。 いや、インターネットの専門家と言うものがどういった分野の専門家であるかでも意見は異なるだろう。 通信技術か、ホームページの作成か、コミュニケーションか、企業戦略か… さまざまな可能性を持つこの世界で、大人数の参加者がひしめき合う 戦略シミュレーションゲームロードオブモンスターIIIはいろんな意味で インターネット自身の縮図でありコミュニケーションの新しいジャンルを開き得る テーゼの一つとして意味を持つ。

 このゲームが六月三十日付け(実際には七月一日)をもって停止した事は、 インターネット自体の存在自体にも疑問を投げかけた事に繋がると認識する。 先の意見と矛盾するかもしれないが、不特定多数の人間がひしめき合う場所での問題が結晶した感がある。 これからゲームは、インターネットはどこに行こうとしているのか。 ひいては情報社会、人間自身のコミュニケーションについても論じて行こうと思っている。

ロードオブモンスターIIIとは?

 日本におけるインターネット上のゲームの歴史はまだ浅く、知名度も低い。 しかしながらWWWを利用した無料コンテンツであるロードオブモンスターシリーズは 増加するネット人口に確実に対応し、数多くのゲーマー達の欲求を満たしてきた。 しかしながら第三弾“III”においては今まで内包してきた問題を一気に露呈した様に思われる。 これらの問題は単なる失敗と言うわけでは無く、 インターネットゲームを語る上で非常に示唆に富んだ、クリアすべき問題だと思われる。

 まず、ロードオブモンスターIII(以下ロドモン)について、簡単に説明しよう。 プレーヤーは“召喚士”となって、さまざまな能力を持つモンスターを召喚出来る。 召喚士は自分の持つ“sp”分のモンスターを編成する事が出来る。 編成したモンスター軍は一ユニットとして他のユニットと闘う事になる。 召喚出来るモンスターを増やす事でユニットに幅を持たせる事が出来る。 マップの任意の部分を通過する事でモンスターが出現する。それらを倒せば 新しいモンスターを召喚する事が可能になる。モンスターには得手不得手がある。 或るモンスターの攻撃が或るモンスターには利かなかったり、 逆に多くのモンスターには驚異となりうるが一部のモンスターには無力だったりする。 バランス良く編成しないとユニットは簡単に全滅してしまう。 編成のコツを覚えて行かないと如何に強いモンスターを持った所で 召喚士として強く成る事は出来ない。

 プレーヤーは国に所属する事が、若しくは空き地に国を建てて国王になる事が出来る。 領地を開拓し、他国に進出し、また他国から国を防衛しなければならない。 国を建てれば国軍が編成でき、他国からの進入者を防衛出来る。 国軍は経費“gp”によって賄われる。gpは敵を撃退したり領地を運営する事で得られる。 また、闘技場で連勝する事でも得る事が出来る。 gpは他にも自分のspを一定まで回復させたり、領地を開拓するにも用いられる。

 ロドモンの世界は常に開かれているので、自分がロドモンが出来る時間以外も 国は危険に晒される。それ故自分だけでなく仲間を集め、共同して国を護っていかなければならない。 仲間を集めるためにはそれなりの知名度や話術が必要である。 その為、非武装地帯の四つの聖地とそれぞれの国にはBBS(掲示板)が備えられ 情報交換や引き抜き、デマゴーグなどが行える。

 特筆すべきは、ゲーム内での目標が提示されていない事が挙げられる。 一応“全国統一”と言うのが一つの最終形として掲げられていたが、 それはあくまでシステム的な限界であり全プレーヤーが目指す物では無い。 プレーヤーは自由に世界の中で遊ぶ事が出来る。無軌道に破壊を繰り返そうと 小市民として掲示板でだべろうと、国営に勤しもうとそれは自由である。 当然小競り合いも出てくるが、それを調停するのは話術やgp、そして武力である。

 これらの要素を組み合わせて、プレーヤーはロドモンの世界で自由に振る舞う事が出来るのである。

ネットゲームとしての位置付け

 ロドモン自体は戦略シミュレーションといった感じであるが、ネットゲームとしては どのようなジャンルに当てはまるだろうか?まず、対戦と言う視点でまとめてみよう。

1.個人向け
 コンピュータとのオセロ、ちょっとしたアクションゲームなど WWW上に載せられる形でゲームが出来るものである。 対象はあくまで個人でありそれは家庭用ゲームで遊ぶのと本質的に変わらない。 しかし、その最高得点等がページに記録されるようになると事情は変ってくる。 その見えざる相手よりも高得点を出すためにそのゲームに打ち込み始める。

 また、ロドモンIの様に相手の編成(アルゴリズム)と闘わせるゲームもある。 誰かが残した編成と自分を戦わせるわけである。自分の方が弱けれは敗退して終わりであるが、 自分が勝てばそのデータは残り、他の誰かと闘う事になる。長時間、また数多くの勝利をおさめれば それだけ知名度も上がり、その世界で名を馳せる事が出来る。 これはそのままゲームへの動機(やる気)を増させる。

2.対戦の萌芽…誰かとの戦い
 対戦オセロや東風荘(専用ソフトを用いてインターネット上で麻雀が行える)等 相手が分かって(特定は出来ない場合もあるが)腰を据えて対戦するゲームである。 やってること自体は普通のゲームと変わらないが、インターネットを介す事で 遠距離の人間と同時にゲームが出来る。 同じ場でゲームをするというのはアーケードゲームの対戦と近いかも知れない。 しかしそれでさえゲームセンターに足を運ぶ必要があるだろう。 その手間さえ省けてしまう(実は格闘ゲームも既にインターネット経由で対戦が可能である)。 後述するがゲームセンターでの対戦でもトラブルは起こる。が、 そのうちの幾つかを回避する事は可能であろう。これからの発展が気になる分野である。

 ここら辺から、情報交換用のサポートページが目に付くようになる。 1でも物によっては攻略の手法等のサポートや、情報交換用のチャットやBBSのページが 目に付くようになってくるがお互いの時間を合わせる必要があり多々の情報交換が必要な グループ制のゲームには連絡手段が欠かせない。

3.大勢での戦い
 ゲームセンターや家庭用ゲーム機での対戦は精々四人くらいであり、大体レース物である。 通常のスポーツの様にチームを組んで…と言うゲームはインターネット上でも少ない。 リアルタイムRPGのDiablo、AoE等が挙げられるくらいである。 チームを造る、つまり特定のメンバーのパーティがリアルタイムで稼動するには お互いの時間が一致しなければならない。 それでも協力し合う事が出来、普通の一人プレーでは不可能な楽しみが得られる。

 全くゲーム内のみで遊ぶ事も可能では有るが、 BBSやチャット、メール交換を行わなければゲームが困難になってくる。 頻繁にメンバー同士が情報交換しないとリアルタイムで動く世界に対応出来なくなってしまう。

4.不特定多数VS不特定多数
 大勢多数の人間が入乱れ、各人がそれぞれの目標に基づいて行動する。 ウルティマオンラインやロドモン等はこれに挙げられる。 他のプレーヤと協力が出来き、時間がリアルタイムで進んでいく。 しかもある種放任的でもある自由度は決まった筋道を重視する従来のゲームとはかけ離れている。

 その分、初心者にはとっつきにくい感がある。しかしウルティマオンラインは 有料のゲームであるのでそれなりに遊ぶ気が無いと参加しないだろう。 ロドモンの場合、無料コンテンツであるので気軽に入ってくる事は出来る。 しかしながら長くゲームを続けるにはゲームを面白いと感じ、インターネットに時間を割くだけの 動機が必要である。特にリアルタイムなゲームだと時間を費やす事がかなり重要に成ってくる。

 非常に大雑把なものであるので少々被っている部分もあるがご了承頂きたい。 今までの傾向として、インターネット上では小人数でのゲームは思考系(チェスやオセロ)、 大人数ではRPG(ロールプレイングゲーム)の形態を取ることに留意して頂きたい。 戦略シミュレーションと言う形の物はまだ少ない。

 今RPGと言う言い方をしたが、それも“モンスターを倒す”事を目的とした サバイバルゲームである事が多い。RPGは元々その世界を楽しむの物であり 殺戮ゲームでは無いというのが私見であるが、ロドモンはそういう意味ではRPGである。 戦略シミュレーションとして見ると、ふたつのジャンルに分けられるだろう。 一つは戦争として、つまり自分のユニットとと的ユニットを闘わせる事、 もう一つは国営、国民を指揮し侵略や国防を行う事である。

 ロドモンはゲームとしてはかなり完成された物ではあった。 しかし、それは参加者が積極的にゲームに参加し、もり立てていれば、の話しである。 普通の戦略ゲームならば良い人材は既に登録されている。しかしロドモンでは それらは生身の人間であり常に働けるかどうか分からない。 生身の人間ゆえの駆け引きが合ったのだが、人間ゆえの馴れ合いも生じた。 プログラムで予想出来ない部分の大きさがロドモンの長所でも 短所でもあったと考えられる。

何が彼らをそうさせたか?

 ロドモンIIIにおいて、全ては自由である。自由、但しそれは責任を伴う。 例えば国王になるとしよう。ロドモンの中ではgpの受け渡しは財務の仕事である。 また、国軍を配備するのは将軍の役割である。これらの役職に就く人選を誤れば 当然国として成り立たず、また見返りが無ければ働いて貰えない。 さらに、無責任無軌道なら人は付いて来ないだろう。

 兎角、人間関係が物を言うゲームである。幾ら強くてもコネや信頼が無ければ 国に雇っては貰えない。ならばコネや信頼はどうすれば手に入るのか? ロドモンに入る前から知り合い同士であるなら特に問題はないだろう。 学友や顔見知りなど実際の場での有志なら問題はない。 また、別のチャットやBBS等、インターネット上での知り合いも多いだろう。 元々知り合いならそんなに警戒する必要はない。

 ロドモン内ではどうすれば良いか?闘技場上位に居れば編成に関する知識を 持っていると言う事であり、それだけ有用である事を示す。 国を落とせばニュースに表示されるのでそこでもアピール可能だ。 特殊な攻撃をする強力なモンスターを倒す事も出来る。

 しかし、やはり先も述べたように聖地や国にBBS(実体はチャットである)が 設置されており、そこでの会話が最も有効であろう。チャットでの会話と言うものは 少々慣れが必要である。羅列される文字列を会話としてどれだけ認識出来るか、 相手に如何に反応すべきか。少々時間を置かないとレスポンスが無いと言う ことも知ってなければすぐに諦めてしまう。 また、当然の事では有るが相手に分かってもらうと言う事は意外と難しい。 特に、選択肢を予め用意してくれる個人ゲームに慣れていると コンピュータの向こう側に居る生身の人間と渡り合うのは難しいだろう。

 私自身も不愉快な書込みを見かけた事がある。自分の要求のみを一方的に書込んだり、 自分の嫌う者を貶したり等である。特に酷いのは「荒らし」と言われている行為で 嫌う相手の居る掲示板に連続で書込み、会話が成り立たないようにしてしまう事である。 この行為はロドモンに限った事ではなく、掲示板やチャットのある所では 常にその危険に晒されている。

 荒らしについてはひとまず置くが、いやな相手と思われれば仲間にはしたくないだろう。 しかしながら大きな穴があった。登録番号は表示されはするが名前の変更は いつでも可能である。つまり相手を識別出来るのは数字と言う記号でしかないのだ。 最終的に数万もの登録のあったロドモンではよほどで無い限りそれが本人か ニセモノかの区別が付かない。また、仮名を使えば誰だか分からないだろう。 非常に匿名性が高かったのである。

 ロドモンにかなり徹した人々はその記号を控えていた。しかし多くのプレーヤーは そこまでの対策は行っていない。いや、行うはずも無い事である。 普通の生活でいちいち相手がホンモノであるか勘ぐるだろうか? 最近になって、ストーカーなどの問題、プライバシーの問題などが浮上し、 以前よりは個人情報を守ろうとする動きは進んできている。が、やはり 他人にどこまで許せるかと言う問題は難しい。

 あまりに他人の名前が乱用されるので、最初に登録した名前が変えられないように 途中から変更された。しかし、名前が変えられなくなったのはかなり後期であり、 既に時遅しの感があった。

CGIにおける問題点

 CGIとはインターネットの端末側ではなくサーバ側でデータ処理を行う技術である。 例えば訪問者数を数えるカウンター、書込みの可能な掲示板やチャット、 オンラインショッピングでの注文の受取りなどに用いられる。 サーバ側で処理を行うため、端末側のマシンの能力に左右されない。 また、サーバ側でデータベースを作成する事が出来き、 不特定多数の要求に対応する事が出来る。 反面、データ処理の全てをサーバ側が賄う事になるので あまりに多くの処理をするとサーバがパンクしてしまう。

 ロードオブモンスターシリーズはCGIを使用して運営されている。 WWWと言うインターネットで最もとっつきやすいシステムで、 最も多くの人間が遊べる様にするためにはCGI無くしては不可能である。

 ロードオブモンスターシリーズはそのシステム上二つの穴があった。 その一つが“自動操作”、もう一つは“影”である。まず、 自動操作について説明しよう。

 通常、ブラウザでの操作は手動で行われる。自分の移動、モンスターの召喚は 操作画面のボタンを押すことででサーバにデータが送信され、 また、その結果が自分の端末に表示される。しかし、これらをいちいち触る事は 面倒であるので知識の或るものは“コントローラー”を作成しうる。 自分の良く使う機能をまとめたコントローラーを作成する事で 操作を簡易にする事が出来る。CGIを使っている以上、これを防ぐ事は難しい。

 そこから少々発展させれば、手動で行っているものを自動操作をさせる事も可能である。 送受信されているのはとどのつまりデータであるのでそれをプログラムによって自動認識させたり 手動では到底追いつけない“連打”を行わせる事が可能である。 実際、技術的にはそんなに難しいものではなく、 多少のCGIの知識とJavascriptやJavaが使えれば簡単に“自動”を行う事が出来る。

 ロドモンにはシステム上幾つかgpを稼ぐ方法があり、一般に“錬金術”と呼ばれる。 錬金術は手間がかかり、手動では到底やってられないものであるが(それでも我慢してやる人も居る)、 自動を使えば短期間でかなりの量のgpを稼ぐ事が出来る。 gpが物を言うロドモンでは貧富の差を産んでしまい、新規参加者との格差を容易に生んでしまう。 更に深刻な問題として、自動が行われるとサーバがその速度に付いていく事が出来ず 停止してしまう。いわゆる“サーバが落ちる”状態である。 こうなると全プレーヤーはサーバが復旧するまでロドモンで遊ぶ事が出来ない。 また、ロドモンを提供しているソニーのサーバにはロドモン以外のコンテンツも含まれるので 他の利用者にも迷惑がかかってしまう。

 CGIにおける諸問題をクリアするための方法はほとんど無い。 なぜならWWW自体が開かれたものを目指しているからである。 また、不特定多数の人間から特定の“自動”使用者を割り出す事も困難である。 あまりに利用者が多く、また使用頻度も高いロドモンにおいては そのログを解析する事も難しい。

 掲示板やチャットなどに悪戯をする“荒らし”については先に少々ふれた。 通常荒らしに対してはそのページにアクセスさせなくするなどの処理が行われるのが普通である。 しかしながら、それにはかなりのプログラム技術を必要とし、 またログからも個人が特定出来ない事態に追い込まれていたロドモンにおいては 不可能に近い技術であった。

 自動を簡単に行えないようにする方法は唯一ブラウザから行う事を諦め 専用のゲームソフトを用いる事である。独自の信号しか受け付けないように してしまわない限りは自動を回避する事は不可能であろう。 しかし当然の事ながら、新しいソフトを造る事はそれは困難であり、 無料コンテンツとしては負担がかかり過ぎる。 また、WWWを流用する事でどんな端末からも操作可能であると言う利点が失われる。

 大きな問題にもう一つ“影”の存在がある。ロドモンは無料コンテンツなので 簡単に複数登録が行える。登録にはE-mailのアドレスが必要であり 登録後暫くしてロドモン世界に入るためのパスワードがそのアドレスに送信される。

 一度パスワードのメールを収得してしまえばそのアドレスは不要になる。 インターネット上では幾つも無料のメール転送サービスが存在するので パスワードの通知が来た時点で転送サービスを解消し、再び他のアドレスを 収得すれば新たなキャラクターを創造する事が出来る。 サーバの管理人とも成れば自分の(若しくは自分が管理している)サーバに一時的に メールアドレスを作る事も可能である。 喩え企業で働いてそこのサーバを使える場合でも、パスワードの通知とともにその アドレスを削除していれば証拠は残らない。

 キャラクターを複数持つ事で作戦に幅が広がる。spを温存する事も可能だ。 また、最初から五匹はモンスターを召喚出来るのでとりあえず呼んでおいて 国防に用いる事も可能である。良い事ずくめでデメリットはない。

 しかし、他のプレーヤーから見れば不愉快極まりない。持つ者と持たざる者が ゲーム以外の部分で決まってしまうのである。しかし、ロドモンの登録の性格上 どれが影か影でないか判別する事は不可能である。一度はメールを渡した相手である、 その時点で相手が居るのか影か否かは判別する事は出来ない。

 そもそもロードオブモンスターIIIには大きな落とし穴があった。 利用者数を大幅に下に見ていたのである。 その為サービス開始直後でまず領土不足を起す。 初心者が安心して建国出来うる土地が一月もせずに無くなったのである。 また、影の増殖も計算外だったに違いない。 転送メールを用いた方法に対して、定期的にメールをロドモン側から 送信する…という方法も考えられるが、既に大量に宛先の無いアドレスが存在している場合 それを行えばロドモンのサーバに大量の“行く先不明通知”が送られてしまい、 サーバがパンクしてしまうのである。

 ここに持つ者と持たざる者の格差が生まれてしまい、ゲームが成立しなくなる一因となった。 実際、大国を維持するためには少々の“影”が必要である。役職に“影”を置いて 複数のプレーヤーがそのパスワードを保持しておく。 そうすれば有事の際でも小人数で対処する事が出来る。

 一般に市販されているゲームは幾度にも及ぶ“デバッグ”が行われている。 そのゲームに不備はないか、ありとあらゆる方法で検討するのである。 ロドモンも一部有志のデバッグが行われ、モンスター同士の戦いについては 数多くのデータが取れていたはずだ。しかし、超多量な利用者、影の存在までは シュミレート出来なかったのだろう。

利用者側の分類

 人間間のトラブルはいかなるコミュニティにおいても起こりうる。 それが不特定多数の人間が入り乱れる場となるとなおさらである。 まず、利用者について熟練と言う尺度で分類してみよう。
 まず、1に付いて論じてみよう。言うまでもなく、ゲームとしてあるからには そのゲーム自体について知らなければならない。ロドモンIII自体には分かり易いマニュアルはない。 そういう意味では非常に不親切なゲームであったわけだが、一通りの操作法と説明は存在する。 また、かなり初期の段階でモンスターの居場所が検索出来る個人ページが存在した。 これらは通常のコンピュータゲームに攻略本が出るのに似ている。 しかし当然の事ながら攻略本的な存在を知っているか否かはかなりのハンディとなる。

 また、ロドモンは先述したように“目標”が明記されていない。 プレーヤーはまず自分が何をすべきか悩む事になるが、基本的には二者択一である。 この世界に留まるか、否か。

 無料コンテンツなので抜けるもの続けるもの自由であり、財布がいたむ事も無い。 基本的に或る程度の召喚能力を持ち、或る程度強い編成が出来る召喚士ならば ゲームをする上ではそんなに不自由はしない。しかし、ゲームの雰囲気に…つまり場所に… 居心地悪く感じればすぐにでも抜ける事になるだろう。

 ロドモンにおいて、その楽しさは建国して国を動かす事に合った。しかし前述の通り 国土そのものが狭いのでそんなに多くの国は存在出来ない。また、大国ほど攻められる事を 恐れるので急に建国されるとすぐに潰す事が多かった。 普通のコンピュータゲームならそういう事はないが、ロドモンでは基本的な戦略である。 それを知らないと被害妄想が広がり、すぐにロドモンから手を引いてしまう、 そういうケースが多く見られた。

 次に2、について。インターネットの熟練度を考えてみよう。  まず、ロドモンの操作画面で何がボタンか、或る程度のインターネット、 若しくはコンピュータに付いて知識が無ければロドモンをゲームとして操作する事は難しい。 しかし、とりあえず触ってみよう、遊んでみようと食指が動けば理解するにはそんなに難しくない。 問題は、難しい部分の情報をどのように得ていくか、また仲間をどうやって増やしていくかと言う事である。 熟練者にロドモンのコツや暗黙のルールを学ぶのもコミュニケーションの能力が問われる。 僕が見る限り、上級者は初心者が聴いてくれば一応の示唆を行っていた。 しかし潜在的なプレーヤーに対しては何も出来なかったのが実状である。

 確かにロドモンには交流用の掲示板(実質チャットであるが)が存在したが、 ロドモンに参加している人間ならば誰でも見る事が出来る物であった。故に戦略や国家機密などは ロドモン内の掲示板で話し合う事は危険である。またこの掲示板には少しのデータしか 保持する事が出来ない。重要な書込みでも、書込みが増えていけば消えてしまうのである。 時間帯が違う人とのコンタクトはこれでは難しい。

 そのため、重要な話し合いなどはメールや他所の掲示板、チャット、IRCやICQ等の連絡法方を用いる事になる。 インターネットから外れるが、直接電話をして交流する事もあるだろう。 これらをどれだけ使いこなし、相手に受け入れられるかという事が重要になる。 こう言った“外部”の情報交換に気が付かなければコミュニケーションを取ると言う インターネットゲームの醍醐味は味わえないだろう。

 しかし、情報の全てが事実とは限らない。インターネット上には確かに情報が溢れてはいるが かなりの部分は“噂”であり、不確かなものである。 ある程度インターネットに慣れ親しんでいれば、他所の情報ソースや連絡法等が或る事に 気が付く事が出来る。また、情報に対する信頼度もかぎ分ける事が出来るだろう。 こういった勘は自分で磨いていく他に無い。

 また、いわゆる“ネチケット”インターネット上でのちょっとした不文律の約束事があるのだが、 それも初心者には壁に感じる。私自身はネチケットを振り回すのは好まない、それこそ 初心者を排除する形になるからである(“エチケット”と言わない時点で閉じられた世界を臭わせる)。 ただ、技術的な問題として半角ガナを使わない、余り大きなデータは流さない等、 コンピュータの知識が必要なマナーもある。コンピュータに熟達した人間ならば それは簡単な論理であるが、初心者には寝耳に水のことでもある。 この部分はインターネットに関する教育が待たれる。

 次に3、戦略ゲームの初心者について。 この部分について余り論じられている事を見たことがないが個人的には重要な事だと思われる。 世の中には幾つもの“戦略”がある。囲碁将棋などのゲームからスポーツでの作戦、 会社の方針、さまざまな“戦略”によって物事が有利に進むように自ら道を切り開かねばならない。

 戦略の基本は大局を見ることである。情報収集、コネクションの拡大、自分の力量、 それらを考慮して対策を立てる。熟練した戦略家に成ると、 情報操作すら行う事が出来る。わざとデマを流したり スパイ戦を行ったりする事も可能だ。 普通のゲーマーはここまでは要求されないし思いも寄らない事だろう。 まさか自分が手のひらの上で躍らされているとすら思わない。 しかし、これらは騙した騙されたと言う次元ではなく、戦略ゲームとしては 不確かな情報を鵜呑みにし、先走った方の負けである。 情報を制してこそ知略の限りを尽くす事が出来るのである。

 当然の事ながら、現実の場面ではここまで酷く“躍らされる”事は少ないだろう。 もしかしたら躍らされているかもしれないが、それに気づく事も殆ど希だ。 気がついた時には全てが片付いている場合も多いだろうが。 まさかゲーム如きで手ごまにされているとは思わないだろう。 ゲームと言えども相手は人間である。さまざまな手管が繰り広げられ、 あたかも戦国時代の相を成していた。そう、ロドモンは国と国との攻めぎ合い、 軍師の策略に満ちた風雲急の世界だったのである。

 この部分の問題は、国の要職に就かなければ軍師としての真価を発揮出来ない点である。 国土が不足しているロドモン内では誰もが建国出来るわけでなく、 また、国営の経験を積む前に他の国から潰される事が多かった。 この点が初心者を締め出し、初期登録者のみのゲームになってしまった原因の一つと考えられる。

 そして最も大切だと思われる4、コミュニケーションである。 ロドモンは1人でも十分遊べる。しかしより深く、より戦略性に富んだ遊びをしようと思えば 他人との関係が不可欠になる。当然同じ世界でだべってるだけでも良いだろう。 しかし、人との接し方(当然マニュアルには載っていない)を知らなければ それは叶わない。

 インターネット上では年齢性別国籍はもちろん、社会的背景や人生等さまざまなカテゴリーの人間が ごった返している。通常の生活では、人間の行動範囲と言うものは自ずと限られており 社交範囲が広いと思っていても案外限られた…つまり自分と気の合う…人間としか接してない。 いや、まさか自分の考え方や生活習慣が一部の(自分の)ものであるとは思いもよらずに生きてるのである。

 自分と違う考え方、行動パターンと違う人間とであった時、 まさしく「信じられない」言動を目の当たりにする事になる。 中国に渡ったマルコポーロ、アメリカに渡った宣教師と言う感じもあるだろう。 ただ、その時相手にどう接するかと言うのも、自分のコミュニケーション力が問われている事に どれだけの人が気が付いただろうか?

 掲示板で良く直面した事態であるが“軍師にして下さい”“領主にして下さい”と一言だけ書いて そのまま…と言うプレーヤーをよく見かけた。自分が何者か名乗りもしない人間に どうして国が任せられようか?

 解らなくて困っている初心者を導くのは熟練者の役割であるが、それもままならなかったのは 熟練者側にも非があるだろう。ロドモンにおいては不倒の国、“ログイン王国”が存在した。 しかし、管理者自身が居るわけでもなく上級者と呼ばれる人間が多いともいえなかった。 結局初心者の集まりでしかなかったのである。

 トラブルを起こすのが子供の場合もありうる。幼児が暴れていればどうするか? ロドモン、つまりインターネットでは年齢制限は在って無いようなものである。 本当に子供の場合はどうするか?また、精神年齢が幼児のまま、 自分の存在をアピールするのが幼児のそれのままな人間も存在するし、ロドモンにも存在した。 彼らに対して打つ手は、残念ながら一介のプレーヤーには無かった。 いや、嫌いだからといって切り捨てていいものかという論もあるだろう。 人間性に対する線引きが行われていいのか?根本的な問いだろう。 しかし、これらに対する論考は全くといっていいほど“無い”。感情論のみが先攻し 冷静な意見は余り見られない。なおかつそれらが解決を与えるものかという事も疑問である。 これらは学問的な部分、社会的な部分での研究が待たれる分野である。 しかし、いつまでも待っているわけにはいかないだろう。 現にロドモンには間に合わなかった。

ゲームの範疇を越えて

 ゲームにはシステムと言う“強制”がかかる。しかし、その範囲内なら何をしてもいいのだろうか? “ゲームのシステム”と言うのロドモンの場合“インターネットのシステム”に内包され、 さらに“コンピューターのシステム”に内包され“現実の物理世界のシステム”の範疇にある。 プログラムである以上、それをクラックする事も可能でありそれは“コンピューターのシステム”の 範囲内ではある。現実の中でもさまざまなシステムが関与している。人間の身体もシステムであり、 関節や筋肉の範疇で動いている、しかしそれを最大限に生かして相手を殺す事はシステムの中の 事であろうか?当然法的なシステム、社会的なシステムから逸脱する行為である。

 常識やモラルと言うものは個人それぞれに存在するものである。ある人の常識が その場で通用するかどうかは議論の余地があるがゲームを行うくらいの範囲ならかなりの部分で 共通項を持つ筈である。社会人として確立しているならばある程度の常識やモラルが求められ それらはロドモンにおいて円滑に遊ぶには十分なものであるはずだ。 しかし常識やモラルが欠ける人間が居る事は確かであり、彼らもまたゲーム内では自由が 認められている。彼らがどう動くか…取り合えず戦略ゲームである以上 禁止事項は無い。全てが戦略であり全てが術なのである。が、それを意識せずに 単に常識はずれ、モラルの欠如を露呈させる者も多かった。

 どれだけゲームとして割り切れるか…と言う事も焦点になった。 掲示板などでは仲良くしていても、いざ国同士が衝突すれば敵として割り切れるだろうか? 私がみる限り、戦争に関してはかなりシビアであったが、術策の世界では 色々と裏があったように見受けられた。当然初心者を切り捨てる大きな理由の一つだっただろう。 恨みツラミも多く見られ、国王や重役に脅迫メールが送られたという話しも聞いた。

 女性プレーヤーに対する嫌がらせも目に付いた。インターネットの女性比率は低く、 世間に見られるようなセクハラやストーカー行為も存在する。 ロドモンでも似たような事が起った。 少々本題とはそれるが、さまざまな場所で自分よりも能力を持つ女性に対して 過剰な反応をする男性を以外と多く見受けられる。 その手管たるや惨々たる物であり程度の限りを思い知らされる。 こういう輩が世の中動かしているかと思うとこの国の前途と言うものが 全く以って幻想にすぎない事を痛感する。 馬鹿な事はお辞めなさい、あなた方に出来る唯一の世直しです。

結局何が問題だったか?

 インターネット利用者は増加の一途を辿っている。それは家庭であるかもしれないし 学校、職場であるかもしれない。新たな世界に入っていくためにはそれなりの準備と 予備知識が必要であるが、インターネット自体が流動的であり人間のコミュニティと言うのは 多分に排他的な部分がある。一体どこが開放的であり、どこが特殊なのか或る程度の 勘(経験)が無ければ電脳の世界を歩むのは難しい。 ロドモンはかなり開放的であった。しかし開放的すぎた。 自分の身は自分で守らなければならなかったのである。

 例えばテニス、週末に運動がてらやる人や、サークルで仲間づくりでやる人、 さらにプロを目指す人、プロで世界大会を目指す人等さまざまである。 彼らは別々の土俵で勝負してるわけであるが、何人かピックアップしてそれぞれやらせれば 当然プロが勝つだろう。

 テニスという同じスポーツでさえそうである。ロドモンの場合さまざまな遊び方が可能であり、 必ずしも同じ遊び方をするとは限らない。勝ちに走るか、システムの裏をつくか、 一つの道具でも遊び方は色々である。それはあたかも子供にボールを持たせ、 どう扱うか見てみればはっきりとする。ある子は1人で遊んでいるだろうし、 ある子は仲間を集めて一緒に遊ぶだろう。遊び方も、1人でボールを弾ませているだけでなく 握ったり押しつぶしたりしている子だっているだろうし、仲間を集めた子を見れば それこそ、ドッヂボールから野球、サッカーの真似まで何でもやっているだろう。

 公式スポーツには事細かくルールが定めされている。しかし、子供の遊びにはそれはない。 ロドモンが子供の遊びかどうかは置いておくが、子供の遊びのように自由であり束縛はない。 ロドモンにおいては土俵は一つである。子供も大人も、文系も理系も男も女も…。

 束縛が無い以上、行動するためには自分の意志が必要である。 自分の意志で動いた以上責任が問われる。それが自由である。しかし、 自由な心を忘れた大人に、どれだけ自由が取り戻せるだろうか。 責任という重荷に既に縛られてしまっているのだ。慎重な人間が動けない以上、 動けるのは大胆な人間か無責任な人間である。残念ながら後者が多かったのだ。

 管理者の能力も問われた。が、ロドモンはかなり特殊な事例であり一概に言えない部分が多い。 ネットゲーム全般に言える事であるが管理者の負担は想像を絶するものが有り 本当にゲームが好きで他の全てを投げ出す覚悟が無いと運営を続ける事は出来ない。 管理者の対応が遅かったのも事実である。しかし、遊んでいる側が感謝の念を持ち 分を弁えていれば破綻は起こらなかっただろう。

 そう、あまりに多くの事が出来、あまりに多くの人が集った。 多様化故の破綻…管理されなければ自主的に動けない人間の多さが露呈した、 それが一番の問題であったと僕は考えている。

ロドモン停止に付いて個人的な見解

 七月一日(六月三十日付けではあるが)、ロードオブモンスターIIIはそのサービスを停止した。 “停止”なのか“中止”なのか“打ち切り”なのか、未だに噂は飛び交っている。 事実、ロドモン側にも不備は多かった、更にプレーヤー側の予想外の行動も見られ 本当にさまざまな人々が入り乱れた事が印象に残った。

 ゲームのコンセプトとしてはかなりマニアックな戦略ゲーム…と言う感じがあったが、 ネットゲームを初めてやる人、戦略ゲームはした事が無かった人までさまざまであった。 そしていつしか、一つのコミュニケーションの場となっていき、そしてコミュニケーションの場所ゆえの 破綻を起して行ったように思える。

 コミュニケーションはインターネットでは必ずと言っていいほど取り挙げられる部分である。 当然の事ながら、コミュニケーションを取るにはそれなりの能力が必要である。 さて、それらが欠落した人間はどうすれば良いのだろうか?

 ロドモンではインターネットで活動するための技能が濃縮されていたと僕は思っている。 チャット、BBS、メールなどのやり取り、ロドモンに触れてホームページを造った人だって居る。 ロドモンにあぶれればインターネットからもあぶれてしまう、そんな気がしてならなかった。

 現在ロドモン終了であぶれた人々が他のゲームに流れているらしい。 そこでの評判はかなり悪いようだ。噂を一方的に信じる事は出来ないが それまでそのコミュニティーに存在していたルールに対応しているのか、不安である。

結びにかえて

ネットワークは決してバーチャルな世界ではなく、
向こう側には人がいるのだということを忘れないで下さい。

 ロドモンの扉に書かれている“途中停止お詫びの言葉”の最後の部分である。 私には一つ疑問がある。バーチャルなのはネットワークを介した時だけだろうか?

 “現実と虚構”、ファミリーコンピュータなど家庭用ゲーム機が爆発的に浸透した時に いわゆる識者達が口を揃えて警鐘を鳴らした言葉である。“もう一つの現実”と言う言い方も 一時期流行ったが、考えてみれば可笑しな日本語である。 少なくともバーチャルな世界も“現実世界”の一部であるし、そこでの経験はやはり 現実世界でも応用が利くであろう。現実云々を振りかざす人間は間違いなく “自分の現実”に立脚して論を進めている。それは子供時代の思い出もあるだろうし、 読み溜めた資料や本でもあるだろう。しかし、それがどれだけの説得力を持つかかなり怪しい。

 最大多数の“一般性”を現実とするのか。しかし、多くの人間が同じような幻想や妄想に 囚われているならばそれは怪しい。それならば魔女狩りやファシズム、大東亜戦争が容易に 正当化されてしまう。科学的な考察よりも感情に訴える方がより説得力はある。 しかし、それでは科学性を放棄するものである。結局、過ちを犯した後で後悔と言う形でのみ 回想する事になる、しかしながら、そこから寓話的な教訓で無い本当のデータを 引き出す事は難しいだろう。人は常に共同幻想の中にいる事を忘れてはならない。

 現実世界自体がバーチャル(仮想)に成りかかっている人間も少なくないだろう。 希薄な人間関係、閉じこもった生活、確かに世界は開けているだろうが 利用しているのはその極々限られた一部。しかも本人達はそれに気が付いていない。 自分の周りで起こっている事、それは彼らにとっては確実に“リアル”なのである。

 閉じこもったリアルと開かれたリアル。現実世界でも家から飛び出せば街にも 都会にも、外国にだって行ける。どの集団に属しているかではなく どれだけ多くの世界を知っているかが重要ではないだろうか? そういう意味では日本人が国際社会に弱い事が分かる。 “国際社会”とは一つの集合ではなく多くの文化の集合体であり、 それらの幾つかに精通し総合的な判断を下せなければならない。 実験と比較と考察によって自分がどういうコミュニティに属しているか 客観的に判断出来て初めて国際社会云々の話しになってくるのである。

 “インターネット”も一つの文化集合では無い。現実と同じく色々な人々が往来している。 ただ、距離的な問題が解決されるので同好の士がコミュニティを形成していくには都合が良い。 それでも大抵のコミュニティは内輪化し“独立”していると思うべきであろう。 喩え都市部に住んでいても出かけるのは会社のみならば狭いコミュニティに属していると言わざる得ない。 同じく無限の可能性を持つインターネットを利用していても毎日同じサイトの同様な情報しか 得てなければ毎日同じチャンネルのバラエティ番組を見ているに過ぎない。

 ロドモンは門戸が広かった。それ故普段は巡り合う事も無いさまざまなコミュニティの人間が遭遇し合った。 会う事のない隣人との遭遇が一つのコンテンツを閉鎖に追い込むまでに至ったのである。 所詮インターネットのゲームである、そう割り切る事も出来るだろう。 しかし、それでも非常に多くの摩擦が生じた。 さらに多様な人間の入り交じるこれからの情報化社会において摩擦は更に増えていく事だろう。 いや、既に起きているのかもしれない。マスコミが騒ぎ立てる社会の腐敗…それは単に 摩擦に耐えられなくなり焼き切れてしまった人間の、断末魔なのかもしれない。 足場の無いリアルの中でそれらが露呈したのがゲームの内であったと言うのは、皮肉ではないだろうか?


破壊の大帝ぐれねーどへ