すかんタコ
「なぁあ、響子はん。 今日、暇やったらうちの家に来ぃへんか?」さぁ授業も終わった事だし、ウチに帰ってシャワーを浴びながら、じっくりオナニーでもしようかな、そんなことを考えていた新里響子は、帰りの廊下で阪上累に呼び止められた。累は隣の3-Bの、関西からの転校生だった。純和風というか、漆黒のおかっぱの髪の毛に、少しつり上がり気味の目元、凛として楚々とした、制服でも着物を着ているかのような身のこなし。飾っているといつのまにか髪の毛が伸びてそうな人形を響子はイメージしていた。
「…んー、別に良いけど」
隣のクラスではあるものの、昼休み一緒に弁当を食べたり、休み時間雑談に耽ったりと、なんとなく一緒にいることが多かった。累の方が誘ってきたのかもしれないが、そこらへんは覚えていない。今回初めて彼女の家に誘われた事も、特に気にすることは無く軽い気持で返事をした。少なくとも、自宅で自慰に耽っているよりは建設的だろう。
「ほんま? わぁ、じゃ、早速いこか」
せかされるまま、響子は累について行く。響子と累は並ぶと同じぐらいだが、響子の方が少し痩せ気味で、少しだけ響子は累が羨ましかった。二人は話しながら歩いていた。取り留めの無い話であるが、累の話は詩情的というか、多感さがそのままストレートに出てくるので、響子は退屈しなかった。
「ほら、ここや」
気がつくと、お屋敷風の家の前にいた。こんな家あったっけ?響子は少し怪訝そうにするが、少し住宅地から離れているし、響子が一人で来る場所でもない。ほんの少し、違和感を感じながら門をくぐる。家の中は少し涼しくて、響子は少しゾクリとした。
「うちの部屋や。楽にしてな」
「………」
響子はなんとなく絶句した。累の部屋は確かに片付いていて、取り立てておかしなところは無い。だが、ちょっと大き目の本棚に並んでいるのは、「成人」のマークがついた、ちょっと普通の女子高校生が手を出さない系の漫画、漫画、漫画。ちょっとしたコレクションである。
「ええよぉ、みても」
視線はしっかり釘着けになっているので、累はすぐ気がついた。躊躇するものの、そういうのが嫌いでは無い、むしろ好きな部類の響子は、そんな思いを裏に隠して表紙が可愛らしいのを一冊とって見る。
うわ、濃いっ。
表紙が可愛い分、中味が残虐だった。可愛らしい少女が何人もの男のモノから体中を突かれて、汁だらけになって要るシーン、そんなのがどのページを開いても続いている。思わず、絵に引き込まれていた。本を観ている目が真剣に成っているのに、響子は気がつかなかった。息が荒くなっているのも、累が寄り添っているのにも、気がつかない。
「うちな」
「なに?」
急に話し掛けられたので、響子は内心慌てながら声の方を向く。
「響子はんのこと、ごっつ好きになってしもうてん」
ちゅぅう。
突然の、吸い付くような口付けで、響子は一気に酔ってしまった。まさに口吸い。持っていた本がばさりと床に落ちる。
突き出た舌を、累は唇で含む。滑った感触に響子は身を固める、唇から舌が押し出され、寂しくなった舌先には、累の舌が絡んできた。響子の首ががくりと倒れそうになると、唇の端から端まで、ついばまれた。赤い累の唇は、桃色の響子の唇と混ざっていくようだった。
「うち、響子はんで頭がいっぱいでいっぱいで、おかしなりそうで敵わんのや……」
響子の頭は累のことで一杯になっている。累の甘ったるい囁きが、響子の理性を取り払い、白昼夢の世界に誘っていた。現実では、響子の咥内のいたるところで、累の舌が踊っていた。彼女がナメクジの様に通り過ぎるだけで、響子の思考はぼやけて行く。通り過ぎた後には蜜のような甘さがじわりと残っていた。
「響子はん、響子はんの身体、もっとよぉみせて…」
いつのまにか上着が脱がされ、ブラがずらされていた。めちゃくちゃ、テクニシャンじゃん、と響子は思った。女の身と心を開く術を心得ている。もう、ここまで来るとヤられるしかない。どうせ一度は散る運命ならば、今自分を求めている累に、散らしてもらいたい。
「夢見たいやわ……… 響子はんのおっぱい、吸えるなんて………」
んっ…ふぅ……
響子の鼻が息が漏れる。累は響子のやや大きめの乳房を捏ねまわしながら、乳首のでこぼこを丹念に舐める。響子は吸われている分、気持ちよさが身体の中に注入されているように感じた。
「響子はんのおっぱい、やわらこうて、まるぅて、きれいやわぁ…」
累の愛撫は執拗だった。響子が不安になるほど、乳首が痛みを感じ始めるほど、累は舐めつづけた。だが、痛みは次第に、疼きに代る。そして、また、別のところを触って欲しくなる。
「おねがい、うちのも吸って。 な?」
累は制服を脱ぎ捨てた。ブラは最初からしてなかった。ごくり、響子の喉が鳴った。着痩せするほうなのだろう。制服の上からでは予想できなかったほど、累の乳房は大きく、ブラなんか無くても、素晴らしく整っていた。
「累さんのも……素敵だよぉ………」
「響子はんが… うちのおっぱい… はずかしぃ……」
ちゅう、ちゅう。慣れない仕草で響子は累の乳首を、乳房を咥える。キスマークが出来そうなほど強く、羽毛で撫でているように優しく。自分がされるとキモチイイだろうと思うことを、響子は累にしてやった。累は喘ぎながらも、響子の背中を弄っていた。体と体が触れ合って、響子は夢心地だった。
「響子はん、もっと、もっとイイコトしたるな」
「うっ、ひっ!?」
累は響子のスカートを捲りあげる。パンティには少し沁みが出来て、響子の形が顕わになっていた。だが、累はそこには触れなかった。パンティ越しに観察される恥ずかしさと、次第に高まってくる期待感、焦燥感で響子は触れられているのと同じぐらい感じていた。
「ああ、ええ匂いやわぁ………」
累の、鼻息がかかるだけで、響子の花は蜜を零す。次第に二つの花びらが開くのを累はじっくりと観察している。ドキドキが止まらない。血がそこに貯まって行くのが判る。これ以上ないほど響子の丘が熱く堅くなって初めて、累はパンティの上から舐め上げた。
「あふぅ………」
「響子はんのここ、塩味(しおみ)が利いて、おいしいわぁ」
「や………」
お約束な台詞ではあるが、累の訛りは不思議なほど、響子の心をかき乱す。ぺろり、ぺろりと舐られると、その度に響子は、秘密への階段を一歩一歩踏みしめている錯覚を覚えた。
「もう、辛抱できへん。 響子はん、うちの想いを遂げさせて………」
累は興奮で少し血走った瞳で響子を、見つめるなんて甘いものではない、差すように睨み付けた。響子に対する命令だった。響子は否応いえない。蛇に飲まれる前のかえるの様に硬直してしまう。先ほどまでのとろりとした雰囲気に日々が入りそうだったが、無遠慮に累はパンティを脱いだ。何故か、スカートがまくれあがったまま固定される。
―なーんーでーすーとぉー!―
声には出さなかったが、響子は心の中で悲鳴をあげた。累の股間には、ひときわ大きく、黒く、反り返った男性器が、明らかに自分に向かって、痛いほど欲情していた。
「おどろいた? うち、おんなやのに、ちんちんついとるんや」
後ろに引こうとする響子に、累は覆い被さる。逃げ場を失いながらも、響子は身を捩って逃れようとする。
「うちの家系な、憑き物落しやっとったんよ。業が深いと、おんなでもちんちんついて産まれるって、うちのおかんがいうとぉた。 ほんとのはなし、うちのおかんも、うちのおばんも、ちんちんついてたんよ」
ぴくぴくと、勃起した累のペニスが弾み、響子の身体を突付く。先走りの液が、響子の太腿に触れる。響子の肌に汗が滲む。累の力は強い、響子は払いのける事が出来なかった。もちろん、悲鳴をあげるなんて野暮な事もしなかったが。
「なんべん、響子はんでヌいたか覚えてへん。でもな、響子はんに逢ってから、響子はん以外でヌいたことなぃ。 ほんと、誓ってもえぇ」
熱い肉棒が押し当てられる。響子の肌は焼印が捺されたかのように反応した。指かバイブで貫通されるものだと思っていた響子は、嬉しいのか悲しいのか、よくわからなくてパニックに陥った。そっちの心の準備はまだ出来てない。
「いや? 響子はん… うちのこと………嫌いに成った?」
「……優しく……してくれるなら………」
急に累の声のトーンが下がったので、響子はふと我に変えると、汐らしく、頷いていた。そうだ、もう覚悟はしたはずだった。どうせ散るなら何で散されても同じ事。響子はワザと視線をそらしたので、 累の口元が妖しく歪んだことには気がつかない。
「響子はん、初めてなんやな。任せて、うちが女にしたるね」
…うぁ…どうしょ…
響子は戸惑った。改めて指摘されると、やはり、少し早まった気がする。
だが、響子が考えを再開する間もなく、するり、とパンティが脱がされた。暑く篭った空気が逃げて、ひんやりとした外気が心地よい。だが、それも束の間、累の熱い物が押し当てられる。
「まだ触ってるだけなのに、響子はんのココが動いて…… うち、もう洩らしそう……」
うっとりとした表情を、累は見せた。響子も、捧げる覚悟は完了した。ココで逃げては女がすたる。大事なところを突き通される。後戻りは出来ない。だが、本当にこんな大きなものが自分の中に入るのだろうか。響子は不安になる。
「いくで?」
ぬるり。累のペニスは意外にも、何の抵抗もなく、すんなりと響子の中へと滑り込んだ。
「ううううっ!?」
響子は声を洩らす。イメージとしてはトコロテンがツルリと、入ってきたかのような感じだ。確かに堅く、弾力もある。だが何かが変だっだ。実感は確かにあるのに、奇妙な安堵感と被虐感が沸いていた。
愛しているからだろうか? 響子は柄にも無い事を考えてみた。
「あああ、響子はんの中、あつぃ……… ……ぬ……ぬるぬるで……ぎゅうぎゅうしてくるぅ………」
「あっ、あっ、あっ……初めてなのに…… キモチが……イイ………」
累はまだ身体を動かしていなかったが、響子の身体はジワジワと、力が抜けて痺れだす。未体験の異物感が、なんとなく身体になじんでくる。累が響子の身体の中で、その形や堅さや感触が、次第にはっきりと感じてくる。それは自分の中に隠れて、今このときを待ちわびていた“女の性”の喜びの叫びだった。
「感じてくれはるんか。…じゃぁ、うごかすで……」
「ひぃっ!?」
響子はしゃくりあげていた。腰が勝手に動いてしまう。累が腰を打ち込むたびに、きゅんと子宮が収縮するのが感じる。累の肉棒が愛しかった。ぎゅっと抱きしめる。抜け出そうとする累を放すまいと力を込める。離れていくそれを、ヒクヒクと名残惜しげに引きとめようとする。突く、留まる、抜く。三つの小節がそれぞれに、快の音階を奏で始める。
そしてまた、リフレイン。
膣内に襞襞があって、それがペニスのエラと擦れあうなんて、話には聞いていたものの、どうせそれは知識でしかなかった。響子は次々に沸き起こってくる実感に翻弄される。自分の体の中に、こんな秘密があるとは思ってもみなかった。
「どう? うちのこれ、イイでしょ」
響子は返事が出来ず、首を縦に振る事で応える。
「響子はんも………キツくていい感じ………」
累は小刻みに腰を振った。勝手に響子はベットのシーツを思い切り握り締める。累のペニスは響子の丁度良いところに当っていた。響子は、胎内奥深くあたる、粘膜の快感にすっかり酔い痴れていた。
「あっ、あっ、あっ、響子……… 響子いく! いっちゃう!」
クリトリス派だった響子は、絶頂へ叫びを少しフライングした。粘膜の感覚はじわりじわりと募って行くものなので、そう簡単には絶頂には達しない。真綿で首を締められるようなものだ。焦らされる。でも、キモチイイ。気持ちよさが、長く続く。
「はう……うちもやぁ……… でる、でるぅ、響子はんの膣にでるぅ!」
累の腰が、奇妙な蠕動を起こした。響子は尻でそれを感じていた。その瞬間、タダでさえ熱い肉棒が急に真っ赤な鉄になって、響子の頭まで貫いた。自分がそのまま切り裂かれるかのように、響子は感じた。
「あああううっ! すごぉっ! 精液、精液すごぃ! アツイィ!!!」
大量に放たれる累の精が響子の身体に染み渡っていく。ココではじめて、あ、コンドームつけてないや、なんて響子は考えた。だが、そんな考えも、いや響子と言う存在自体が吹き消されていく。新里響子という存在が阪上累という色に染まり切ったかのようだった。
思考が逆転した。今まで生きていた中で、最も高みに登りつめている。ステージが一足飛びに上がった感じだ。
「あ、あ、あ、…アソコで…イっちゃった……」
響子は余韻に浸っていた。初めて感じる場所で、初めての絶頂を迎えた。いや、本当にアソコだけで行ったのかどうか、未経験な彼女に判るはずも無かったのだが、少なくとも今までに無かった喜びに満ち溢れて、行った、というふうに捉える事が出来た。 累がじっと、今の自分を見つめている。それもまた、悦びだった。ほんの一時の間だったが。
「ああう!? なっ……なにっ!?」
響子の下腹部で、の精液が渦を巻いていた。悪寒と悪心で気持ちが悪い。ベットの上で、響子は全身でのたうった。内臓が溶けていく感じだ。先の絶頂の快楽とは違う。胃や腸がドロドロと形を変えていく。とぐろを巻いた蛇が育っていくかのように感じていた。
「あっ!? はっ、あああっ!? 何か…何か出てくる! 生える!?」
むくり、むくりと身体の一部が、秘所の上から、ちょうど柔らかな丘の一番上のところから、内臓が皮膚から突き出して肥大していく感覚。錯覚ではない。目に見えて突き出てくるそれは、男性器以外の何物でもなかった。
「言い忘れ取ったけどな、うちの精液かかったら、ちんちんついてしまうんよ。なんか、退治しとるうちに、うちの家系も魔になったらしいで」
妖艶に、累が嘲笑った。響子の頭はガンガンと、競輪のドラの様に鳴り響く。嘘、ホント、信じたくない。いろんな気持ちが溢れかえって、
「あ……あ…… 取ってェ! 取ってよぉ! 元に戻してェ!」
累はぐっと、響子の肉棒を握り締めた。響子は ひっ、と身を竦める。予想外の痛みとその敏感さから想像できる快感の予感。口から唾液が垂れる。
「これでお互い様や。 響子はんのできたてのちんちん、おいしそうやわぁ……」
累は響子に逃げる間を与えず、彼女の亀頭に口付けた。ぶるりと響子が震える。竿の部分をチロチロと舐め上げ、カリをねぶる。
「あーひゃぁ! ひゃっ、ひゃっ! ひゃぁああ!!」
響子の腰が揺れた。バカみたいな刺激だった。どうりで、男の子がオナニーに狂うわけだ。こんなに手軽に気持ちよくなれるなんて…。
「これからやでぇ…」
累は口をつぼめて、頬の裏側を響子に押し当てる。そして、ずぶっ、ずぶっといやらしい音を立てながら、首を振った。累の異様な姿と疑似セックスの快感に、響子はただもう、流されるだけだった。
「あうっ! でっ、でる!」
ぶっ、ぶっと音を立てて、響子ははじめて射精した。快楽と引き換えの脱力感が響子に重く捺しかぶさった。程よい感覚だ。ぺたりとベットに横たわる響子を、見下ろすように累が立っていた。
「もう、響子はん。 最初やからしゃぁないけど………」
顔にかかった白い液が、累の表情を高校生とは思えないほど婀娜っぽくしていた。息が荒いまま、響子は定まらない視点で、累の両の乳房から滴る、まるで乳のような自分の放った液体を眺めていた。
「今度は、うちがイクまで、イったらあかんよ」
力が入らず、横たわる響子に累は馬乗りになる。再び触れ合った太腿に、緊張が走った。
「ふふ、響子はん、オンナになったあとはオトコになるんよ… 響子はんは全部、うちのものやぁ……」
あー、ああっ、ああああっ………
累の入り口が、粘膜が、響子の敏感な部分に触れている。響子が累に与えていたのと同じ感触を、今度は響子が味わっていた。またすぐにでも射精してしまいそうなほど、両足の付け根がうずうずする。
「歯ァ、食いしばりやぁ……」
ゆっくりと、累は腰を静めていく。本能的に響子は口を閉じた。生暖かさが過敏な部分を飲み込んでいく。
「あっ、はっ、はっ、はっ……やん……やう……やぁ………」
「はぁぁ……… 響子はんを……… 食べてしもぉた……」
おどけるような表情で、累は死にそうな顔の響子を覗き込む。響子は冗談を解釈する余裕は無かった。口も確かに気持ちよかった。だが、累の中はそれ以上に気持いい。
「ほななぁ、うごいたるで……… 気持良ぉ、なってや」
うぉぉぉおおっぉおおおおおぉおぉおおぉおおおぉおおおぉぉおおおぉおおぉぉぉおおお……
響子は身を弓なりにして、破壊的な刺激に耐えた。言葉を発することが出来なかった。ネットリとマトワリつく、累の粘液と肉襞が、出来立ての響子をしごく。
「ああ! ええわぁ! 響子はんがうちの中で暴れてるぅ!」
暴れているのは累なのだが、累は響子に突かれているように感じている。自分が望む場所に、響子を押し当て、引き付け、擦り付ける。
「いやぁあっ!? ああうっ、はうっ、はうっぅっ! あうああああっ! あうつっ!? あっ!」
喘がないと息が出来ない。さっきの、オンナとしての快感が、響子の肉棒には混在してた。男性的な気持ちよさと女性的な絶頂が、まるで表裏のように、片方が現れては消え、現れては消えていく。だが、気持ちよくなったという事実は消えることなく心に刻まれていく。
「あーっ、はあああーーーーーー! 堪忍してぇ! うち、うちぃ、もう、壊れそうや!」
累の“男”の部分が天を向いていた。累は腰をねじり込むようにくねらせる。響子を膣道全てで感じ取ろうとする。逆を言えば、響子は累の全てを感じ取っているのだ。
響子の身体は沸騰していた。全ての血が、唾液が、涙が、体液が、愛液が、臓腑の中のもの全てがグツグツと音を立てていた。血管が切れそうだった。神経が伸びきってしまいそうだった。肌がはちきれんばかりだ。骨が軋んで折れそうだ。
「ああうっ、響子はん…… 響子はんはうちのもの…… うちのやぁぁぁぁああああ!」
「あああっ!? あうっ、いぐっ…いぐっ!! いぐぅぅううう!!?」
身体の細胞の全てが一斉に収縮し、その活力の全てが、伸びきった器官に集約した。光が逃れなれない暗黒に吸い込まれていく。そして、響子にとっては永劫とも思える、ほんの一刹那の間の空白の後、
「うわぁっ!うっうつつうっ…… でっ…でっ…出るぅっ! でちゃうぅっ! ぜんぶ…ぜんぶ、でちゃうぅううう!! きょうこのぜんぶ、きょうこがぜんぶ、ぜんぶでちゃうぅううう!!!!!」
虚ろ。出た分、確実に、響子の中に空白が生じる。先ほどの射精とは訳が違う。寿命が縮むのが実感できるほどの膨大な快感と虚脱感。
「響子はんの…おぃしぃ…」
累は“女”の部分で、吐き出される響子のエキスを吸い上げていた。喉ならばゴクゴクと音を立てるところだろうが、下腹部は静に、それでも激しく上下に波打つ。奇怪なことに、精液が逆流する事は無かった。
「とっ…とまらないよぉ… とまらなぃ… とっ…っとぉ… おおおおぉおぉおお!!」
ぶしゅっ、ぶしゅっ。男ならもう止まっていいはずなのだが、響子は勢いよく飛び出す白濁液がいつまで立っても、噴水の様に飛び出しつづけるのに不安になった。飛び出るたびに気持ちよく、命が削られていく。 体中の腺が開きっぱなしになって、だらしなく垂れ流れる。筋肉は弛緩し、視界が薄暗くなる。出来立てのペニスも、次第に小さく、身体の中に引っ込んでいく。
「はぁーーーっ…はぁーーーっ…… あーーーっ…あーーーっ……」
五分にも及ぶ放出が終わると、累は響子の身体から離れた。いや、結合すべき部位がすっかり消えてしまったので、離れざる得なかったのだ。響子は砂漠に打ち捨てられた、干からびたミイラになった気がしていた。汗などでシーツがぐっしょりと、バケツをひっくり返したかのように、水溜りができるほどに濡れて、いた。
「まだ生きてるん? …ふふ、ほんま、活きのええ子やなぁ………」
次はマジで死ぬ。次にしたら、ほんとに死ぬ。死ぬ、死ぬ、死ぬ。
深呼吸をしているのに、息が苦しい。気が緩むと心臓まで止まりかねない、そこまで響子の身体は弱っていた。そんな響子だから、累との交合の理不尽さを吟味することなどできず、ただ、ひたすらに生命の危険ばかりが頭を過ぎる。
「うち、ちょっと食べ過ぎたわ。腹ごなししてくるさかい、また、後でやろうな」
累は軽く、響子に口付けた。その瞬間、少しだけエネルギーを返してもらったような気がして、呼吸も楽になった。ようやく、頭が少しだけ回った。ココに居ては殺される。その閃きが響子を突き動かした。累が部屋の外に出たのを確認して、今でも睡魔に襲われそうなのを振り払い、服を着る。パンティ、ブラ、スカート、上着。深呼吸をして立ち上がると、軽く眩暈がした。だが、何とか成りそうだ。
どこをどのように逃げ去ったのか、響子は覚えていない。ただ、やっとの思いで家にたどり着いたものの、腰が抜けて起き上がれなかった。長い間気を失っていたが、ぼぉっとした頭で目覚めれば、性感を求めて全身が火照っていた。
したい、やりたい、いきたい。
淫に溺れたかった。だが響子は、じっと様子を伺っている、死神の視線を感じていた。死の匂いを漂わせたフードにその身をやつした、大鎌を携えた不吉な影がカーテンの蔭から様子を伺っている。自分が自慰を始めれば、彼が必ず圧し掛かってくるだろう。響子には妙なプライドがあった。骨と皮だけの冷たい骸骨に身を開くほど、自分は落ちぶれてない、と。
死神が彼女の妄想だったのか確かめる術は無いが、とにかく、夢と現を繰り返しながら、響子は昏睡からなんとか回復した。三日目の朝だった。響子が気がつかないうちに、医者が診察してくれていたようだ。曰く、体力の使いすぎ。目覚めた時に起きたら精のつくものを食べてゆっくりすれば大丈夫であると。響子の家族は、あえて響子に何があったのか尋ねなかった。むしろ、言わなくても何もかも筒抜けになっているようで、響子はかなり恥ずかしかった。
「あ、……累ちゃん? 二日ほど前にお家の都合で急に転校しちゃったよ?」
「あーあーあーあ………ありがと」
響子は溜息をついた。累の姿が見えないので、B組の子に聞いてみたのだ。助かったような惜しかったような、微妙な感じだった。 一時期は死にかけたとは言え、恐怖感がなくなると直に悪い虫が騒ぎ出す。これがオンナの性なんだろうか?
初めてが人でなかったことは、響子は特に気にしてなかった。だが、思い出だけにとどめておけるほど、彼女は大人ではない。本当はあって、サヨナラを言って見たかった。
でも、やっぱり、コンドームは必要だよね。
響子は苦笑する。今回賢くなれたのは、それぐらいかなぁ、なんて思いを馳せながら、窓の外を見る。
「私の明日はどっちだろうなぁ…」
とりあえず、女になれた。それでいいんじゃない? そう思った。