〜2つのルーツ〜(10)

東予港に立ち寄り,翌日のフェリーの予約を済ませた後,再び R11 を松山方面へ。
かつて母方の祖父母が住んでいた丹原町明河へ走り出す。

17年ぶりの道,風景が記憶と合致せず些か不安を感じてしまうが
梶まで来た途端,記憶の中の風景と,目の前の景色が一つになった。
川を覆う様に生える木々,17年前と同じ形の訳が無い。が,きっと同じ樹だ。

「この道だ,やっぱり間違いない」


鞍瀬川に沿って上って行く私を
安全祈願のデカい草履が迎えてくれた。

途中の幾つかの集落を駆け抜けて行くが,あまり変わってない様に思える場所と,随分変った様に感じる場所がある。 もっとも 17年前,当時小学生だった私が此処に来る時はフェリーの着く時間が大抵深夜だったので 明るい時の途中の光景より,天を覆わんばかりの天の川と星空の記憶の方がはるかに大きいのだが。

途中から降りだした小雨はやがて本降りになった。

地図上でははっきり解っていても,実際に走ると時間と距離の感覚が一致しない。 「明河」の立看板を見てからも随分と走っている。もしかしたら集落自体が無くなってしまったのでは?という疑問符が心に浮ぶ。

・・・・その時突然記憶と重なる風景が現れた。

少年の頃,夏の日の記憶は全てこの場所に繋がっている。
この橋を渡り,石段を駈け上ったそこに祖父母の住んでいた家が・・・

前のページへ トップページへ 次のページへ